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【漫画】パイロットの仕事を与えられないことに苛立つ少女 飛行機技術の進化に多くの屍が「引き込まれた」

第一次大戦後の1926年、郵便配達会社にパイロットとして採用されて働くアン。しかし、上司からパイロットとしての任務をずっと与えられずにいて……。著書『星の王子さま』などで有名な作家サン=テグジュペリの生涯がモチーフ描かれたマンガに多くの反響の声が寄せられています。作者のすみれちゃんさんにお話を聞きました。

空を飛ぶことに想いを馳せる、想像力が豊かなアン

雑務ばかりの仕事に不満を抱くパイロット見習いの少女 (C)すみれちゃん/イースト・プレス
雑務ばかりの仕事に不満を抱くパイロット見習いの少女 (C)すみれちゃん/イースト・プレス

 第一次大戦後、1926年のフランスで、郵便配達会社にアンはパイロットとして採用されますが、もらう仕事は雑務ばかりで郵便配達の仕事をなかなか任せてもらえません。これを不満に思ったアンは、上司であるドーラに直談判しに行くも「お前はまだ飛ばさん」と一蹴されてしまいます。ある日、世界中にいる会社のパイロットが全員集まる会議に参加しますが、やはりパイロットとしての仕事は与えられず……。

 すみれちゃんさん(@lalah_7th)による創作マンガ『1926年フランス。飛行機が木と布だった時代、夢見る新米飛行士が空を目指す漫画』がX(旧:Twitter)上で公開されました。今作はWebメディア「マトグロッソ」(イースト・プレス)で『サン=テグジュペリは夢をみる』というタイトルで連載中の作品です。いいね数は1.8万を超えており、読者からは「キャラクターたちが魅力的」「引き込む力がハンパない! 最後まで一気に読んでしまった……!」「空を飛ぶということは多くの犠牲の上に成り立っているんですね」などの声があがっています。

 作者のすみれちゃんさんにお話を聞きました。

ーー今作が収録された連載作品『サン=テグジュペリは夢をみる』は、著書『星の王子さま』などで有名な作家サン=テグジュペリの生涯がモチーフにされているかと思われます。連載までの経緯や作品に込めた思いなどを教えて下さい。

 私は2023年まで会社員だったのですが、商業の舞台でマンガを描いてみたく、「コミティア」で頒布した同人誌をイースト・プレス社のマンガレーベルである「マトグロッソ」に持ち込みました。そのときに、歴史もののマンガが好きだと担当編集者様に伝えたところ、歴史上の人物についての企画をやってみないかとお話をいただきました。以前、間接的にですがサン=テグジュペリをテーマにした同人誌を描いたことがあったので、それならばと彼についての企画を考え始めたのです。

 しかし、私はいままで趣味でイラストやマンガを描く程度でした。そういえば男性キャラを描いたためしがないことに気付き、この企画は自信がないと担当編集者様にお伝えしたところ、それならサン=テグジュペリを女の子にしてみてはどうかと提案されました。それを踏まえて完成した企画が「アン」という女の子がサン=テグジュペリの生涯を追体験するお話『サン=テグジュペリは夢をみる』です。

 私はマンガの『風の谷のナウシカ』を小学生の頃初めて読み、特に作中に出てくるトルメキア軍の鈍重で重厚そうな軍用機の数々に目を奪われ、飛行機が好きになりました。それがきっかけで、いわゆる戦記物をいろいろと読むようになりました。そのなかでサン=テグジュペリの著書『夜間飛行』の表紙を、宮崎駿先生が描いていると知って、読み始めたと記憶しています。

ーーパイロットたちや郵便会社の飛行場の様子がとてもリアルに描かれています。実際に取材などには行かれたのでしょうか? 取材に行かれなかったのであればリアルさを出すために工夫したことがあれば教えて下さい。

 取材には行っておりません。機会があればフランスへ取材旅行に行ってみたいですね。現地の航空博物館やサン=テグジュペリゆかりの地などを訪れてみたいです。リアルさを出すための工夫ですが、なるたけ文献をあたるようにしています。

 そのなかで当時あったもの、逆になかったものを知り、その条件下であればこういう「動き」「行動」「考え方」をするだろうなと想像して描くようにしています。しかしまだ知識が及ばず、もうちょっとこの部分について資料などの材料があれば高解像度で描けるなーと思うところがいくつもありますので、これからもいろいろ勉強していくつもりです。

旅客機のテスト飛行に望む少女が体験するトラブルとは? (C)すみれちゃん/イースト・プレス
旅客機のテスト飛行に望む少女が体験するトラブルとは? (C)すみれちゃん/イースト・プレス

ーー飛行機のデザインに対しても読者の方から多くの反響がありました。何かモデルの飛行機はあるのでしょうか? また制作時にこだわった点などを教えて下さい。

 いまのところ本作で登場した飛行機は、「ブレゲー14」という第一次世界大戦中にフランスで開発された飛行機です。サン=テグジュペリがラテコエール社で郵便配達をしていたときに乗っていた飛行機がこの型で、煙突みたいな排気管が特徴的な、私が好きな飛行機のひとつです。

 描くにあたっては、ブレゲー14のプラモデルを買って、それをよく観察しながら描くようにしています。ブレゲー14は日本のプラモデルメーカーは作っていないので、海外のメーカーから買いました。高かったです(泣)。

 また、この時代の飛行機は本当に資料が乏しく、特に日本語でまとめられた文献などはないに等しいので、英文や仏文の資料を探して取り寄せ機械翻訳にかけたり、当時の写真を文献やインターネットで探して構造を調べたりしています。ちょうどいまはブレゲー14の操縦席回りがどういう構造になっているかを調べていますが、例にもれず資料がなく、海外の博物館に問い合わせメールを投げてみたりしています。詳しい人どなたかにご教授願いたいところです。

ーーたくさんの感想が寄せられています。特に印象に残った読者のコメントはありましたか?

 感想とはすこし違いますが、一番うれしかったのはこのマンガ見て「人間の土地」買ってきた! と引用リポストしてくれた方がいらっしゃったことです。こういう形で自分のマンガがきっかけになると、本当に描いたかいがあったなと思います。

 また、作中の飛行機黎明期の時代、当時いかにそれが安全性を欠いた乗り物だったかという「飛行機の残虐性」には必ず触れたいと思っていたので、ここに言及する感想がとても多く、伝わって良かったなと思います。

ーーすみれちゃんさんがマンガを描き始めたきっかけを教えて下さい。

 3年前に「コミティア」に一般参加したがきっかけです。私はいままでたまに絵を描いてそれをX(旧:Twitter)に貼るのみの創作活動でとどまっていましたが、「コミティア」で同人誌を頒布する作家様方をみてうらやましく感じ、翌年に自分も思いきってサークル参加しました。

 同人誌を作るにあたって、最初はイラスト集のなかに数ページマンガみたいなものがあればいいなと思い、マンガの描き方を調べてプロットを描いてみたところ、お話が100ページでは収まらないくらいながくなってしまい、マンガ一本にしぼって同人誌を作りました。

その本が「with you, to Atlantis.」です。先ほどお話した、サン=テグジュペリをテーマにした同人誌というのはこの本でした。個人的には飛行機がいっぱいかけてうれしかったです。

ーー今後、X(旧:Twitter)で発表される作品については、どのように活動していきたいとお考えでしょうか?

 最近はマンガにかかりきりでイラストを描けていないので、時間が空いたらまたイラストが描きたいです。またマンガであればいろんなお話を読み切りで描いてX(旧:Twitter)にて発表したく思います。

●Webメディア・マトグロッソ(イースト・プレス)で連載中の『サン=テグジュペリは夢をみる

(マグミクス編集部)

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