空前絶後の「出オチ」を演じた『ガンダム0080』スカーレット隊 なぜ出撃→即全滅?
連邦司令の下した命令が運命を決めた?
●サイド6を巡る、連邦上層部の思惑
もう少し突っ込んだ話をすると、連邦とサイド6の間で安全保障条約を結ぶ話が進められていることを、バーニィが明かしています。実際にこの条約が締結されたのは0080年1月14日のことで、『0080』の舞台となった0079年12月には、交渉は大詰めを迎えていたと考えられます。
さらにバーニィは「つまり今はまだ連邦の活動にいろいろと制約がある」と語り、連邦はサイド6で積極的な軍事行動がしにくいことを示唆していました。
現にサイクロプス隊のケンプファーがコロニー内に現れたとき、連邦軍司令のスチュアート少佐は、リーア軍(サイド6の自警組織)に対して、「連邦はあくまでリーア軍の支援のかたちをとる。これ以上コロニー住民の不評を買う気はない」と明言しています。
その後スチュアートは、「グレイファントム」をコロニー内に入れるよう指示を出すと、「MSが接近するようならジムとガンキャノンで防衛ラインを張る」と命じました。この言葉は「MSが接近しない限りは手出ししなくていい」という意味にも受け取れ、かなり消極的なスタンスに見えます。
このスチュアートの発言から、暗に「サイド6内部での戦闘は回避したい」という思いが伝わります。出撃したスカーレット隊のメンバーもそう受け取ったなら、コロニー内での攻撃を躊躇しても不思議はありません。
一方、戦況的に後がないジオン軍のサイクロプス隊は、最初から全力で攻撃を仕掛けました。スカーレット隊の無防備な降下中を狙って、ケンプファーの対MSロケットランチャー「シュツルム・ファウスト」を2発同時に発射、命中させるなど、ベテランパイロットのミハイル・カミンスキー(ミーシャ)が圧巻の神業を披露しています。
このミーシャの奇襲が見事にハマり、映像上ではわずか1分ほどでスカーレット隊は全滅。それも、ただ全滅しただけではなく、アニメ上では連邦が誇る高性能MSたちが反撃すらできませんでした。
もしも中立コロニーに対する連邦軍の煮えきらないスタンスと、上官の中途半端な命令が足を引っ張ったのだとすれば、スカーレット隊だけが不名誉な扱いを受けるのはかわいそうな気もします。
ただ、個人的な意見をいわせてもらえば、イケメンすぎるジム・スナイパーIIやガンキャノン量産型が輝くシーンを映像でしっかり観たかったという思いはあります。
(大那イブキ)