『Gマジンガー』主人公のモミアゲが細くなったワケ 大ヒットに垣間見る制作陣の苦悩
「グレートマジンガー」の映画なのに出番なし…?
鉄也が取り返しのつかない大失敗をしてしまうのが、前後編で放送された第55話、第56話(最終話)のエピソードでした。
それ以前の第53話「偉大な勇者!! ファイト鉄也・ダッシュ甲児!!」から、鉄也はアメリカ帰りの甲児およびその甲児が搭乗する「マジンガーZ」と共闘することになりました。ところが、実の親子である甲児と剣造博士の関係を目の当たりにした鉄也は、自分のポジションが奪われるのではないかと危機感を抱き、次第に甲児に対抗意識を持つのです。
「わざと機械獣を逃がしてミケーネ帝国の本拠地を突き止める」という作戦が遂行されるなか、甲児の忠告を無視した鉄也は機械獣を破壊してしまいました。鉄也と甲児にわだかまりが生まれた隙を突かれ襲撃を受けた「マジンガーZ」と「グレートマジンガー」は、ともに戦闘不能へ陥ります。
絶体絶命で迎えた最終回では、敵の要塞「デモニカ」が「グレートマジンガー」に迫ったとき、剣造博士が科学要塞研究所の管制室ごと「デモニカ」に突入し、自分の命とひきかえに鉄也を救いました。最終的にはダブルマジンガーの攻撃で「デモニカ」にとどめを刺せたものの、剣造博士は亡くなり、鉄也自身も重傷を負ってしまいます。
鉄也は自分の浅はかな行動によって、甲児やシロー(甲児の弟)を孤児にしてしまったことを悔やみ、そして重傷を負いながらも、亡き剣造博士の愛に報いるために再起を誓うのでした。
こうして『グレートマジンガー』の物語は幕引きとなり、翌週より続編『UFOロボ グレンダイザー』の放送がスタートします。しかし、その後約1年半にわたり放送された同作において、「兜甲児」がレギュラーメンバーを務めた一方で、「剣鉄也」が再登場することはありませんでした。「懐かしのTVアニメ99の謎」(二見書房)によると、実は『グレートマジンガー』の最終回で鉄也を死亡させるプランもあったようです。死ななかっただけでもまだマシだったのかもしれません。
その後、1976年春の「東映まんがまつり」の1本『UFOロボ グレンダイザー対グレートマジンガー』では、あろうことか鉄也は登場せず、甲児が「グレートマジンガー」を操縦しています。
鉄也が新規アニメ作品に再び登場したのは、1976年夏の「東映まんがまつり」の1本『グレンダイザー・ゲッターロボG・グレートマジンガー 決戦!大海獣』でのことでした。ただ、この作品でも甲児と衝突して険悪な空気となり、トラブルメーカーの役回りを担わされてしまいます。
このような扱いを受けていた鉄也と「グレートマジンガー」ながら、一方で番組視聴率や玩具の売上は共に『マジンガーZ』よりも好成績だったのです。なのに、なぜ鉄也はこれほど不遇をかこっていたのでしょうか。
制作に関わったダイナミックプロの菊池忠昭氏は、かつてムック本のインタビューに応じ、「グレートマジンガー」は『Z』最終回での初登場が最高すぎて、それ以上のことができなかった、といった趣旨の発言をしています。
最高の登場をした「グレートマジンガー」と鉄也を、その後どう演出すれば番組が盛り上がるのか、製作陣も扱いかねていたことがうかがえます。『UFOロボ グレンダイザー』にレギュラー出演した兜甲児や、海外でも人気を博した「デュークフリード」と比べて、剣鉄也は不運な主人公でした。
※本文の一部を修正しました(24日12時25分)
(LUIS FIELD)