強敵「キングジョー」が戦闘でセブンより小さかった謎 第15話「ウルトラ警備隊西へ」の裏話
「キングジョー」は『ウルトラセブン』の第14、15話「ウルトラ警備隊西へ」で、前後編にわたってセブンを苦しめた強敵です。しかし後編で、いざセブンと対峙したときの見た目は意外と小柄でした。
「ウルトラ警備隊西へ」のセブンは「中の人」に事情が?
1967年『ウルトラセブン』に登場した「キングジョー」はシリーズ屈指の強敵で、第14、15話「ウルトラ警備隊西へ」で、前後編にわたってセブンを苦しめました。しかし後半の戦いで、いざ組み合ってみると、セブンが見下ろす形になるほど小さかったことが判明します。最強の敵が小さく見えたのには、撮影上のアクシデントに理由がありました。
放送開始時、セブンのスーツアクターは上西弘次さんひとりが担当していました。しかし、放送が始まるとたちまち撮影スケジュールが押してしまいます。巨大化するだけのウルトラマンと違い、セブンは伸縮自在なので、ドラマパートにも出演しなければなりません。
撮影が間に合わなくなり、キングジョーが登場した第14、15話の撮影だけは、急きょセブンの代役を立てることになりました。
破李拳竜氏による著書『特撮ヒーローを演じた男たち ザ・スーツアクター』(ソニー・マガジンズ)によると、そこでセブンの代役スーツアクターに抜てきされたのが、きくち英一さんでした。きくちさんは当時、アクションができる俳優を育成する養成所JFA(ジャパン・ファイティング・アクターズ)の創立メンバーで、1966年の特撮番組『マグマ大使』の怪獣のスーツアクターとしても活動していました。
大柄なきくちさんには上西さんのセブンのスーツが入らず、今までより大きなサイズのスーツを新調することになりました。キングジョーは本来の設定どおり、「上西さんのセブン」よりも大きくなるように作っていたのですが、「きくちさんのセブン」はそのキングジョーの身長よりも高くなり、見た目上の身長差が逆転してしまったのです。
第14話は光線技の応酬、遠距離の戦い、キングジョーがセブンの馬乗りになったことで、身長差が目立ちませんでした。しかし、第15話のセブンとキングジョーの立ち合いの場面では、セブンがキングジョーを見下ろすような形となり、身長差があらわになってしまったのです。
円谷プロの公式サイトによると、セブンの身長は40mで、キングジョーは55m。キングジョーの方が15mも大きいはずでした。しかし、実際の映像でセブンの方が大きくなってしまったのは、スーツアクターが交替したためのアクシデントだったようです。ちなみに、キングジョーが再登場した2005年『ウルトラマンマックス』第14話でも、キングジョーはマックスが見上げるような背丈でした。
黒いキングジョーである「キングジョーブラック」が登場した2009年の映画『大怪獣バトル ウルトラ銀河伝説 THE MOVIE』で対決したときも、キングジョーがセブンより頭ふたつ分高くなっています。
『ウルトラセブン』のなかでもひときわ印象に残る戦いを見事に演じ切ったきくちさんは、その後に『帰ってきたウルトラマン』のスーツアクターに抜てきされました。さらに『電人ザボーガー』『大戦隊ゴーグルV』など、素顔を出す俳優としても、多くの特撮番組に出演することになります。
(LUIS FIELD)