『ドラゴンボールGT』は「ごめんね鳥山先生の略」説の真相 本人はどこまで関わってた?
長らくネットを中心に、次のような俗説がささやかれています。アニメ『ドラゴンボールGT』の「GT」は「G(ごめんね)T(鳥山先生)」であるというものです。果たして、その真相は?
『ドラゴンボールGT』の「GT」の意味、答えられますか?
2024年3月1日に偉大な漫画家である鳥山明先生が亡くなり、約1か月半の間にさまざまな追悼の言葉、作品に触れた思い出を語る人びとのコメントがSNSに出ていました。この機会に『Dr.スランプ』や『ドラゴンボール』のマンガやアニメを観返した、という人も多いでしょう。
そんな鳥山先生と作品に関して、一部で都市伝説のようにささやかれているのが、「原作の最終話のその後」として作ったオリジナルアニメ『ドラゴンボールGT』に関するうわさです。ネットでは長年にわたり、「G(ごめんね)T(鳥山先生)の略」だという俗説が語られてきましたが、本当なのでしょうか。
1996年2月より放送開始されたアニメ『ドラゴンボールGT』は、鳥山明先生の「原作」が存在せず、ほぼ全編にわたりオリジナルストーリーです。放送開始の1週間前には、アニメ『ドラゴンボールZ』が最終回を迎えたばかりでした。
1986年2月から放送が開始された元祖アニメ『ドラゴンボール』から数えて、実に10年にもわたる長大な物語の幕が閉じ、その余韻もそこそこに続編である『ドラゴンボールGT』は始まったのです。
『GT』は『Z』の最終回から、5年後の世界が舞台となっていました。お馴染みのピラフ一味に発見された究極のドラゴンボールの力によって、孫悟空は子供に戻ってしまいます。宇宙に散らばった究極ドラゴンボールを探すべく、ベジータの息子トランクス、そして悟空の孫娘パンと連れ立って大冒険へと出発する、という幕開けです。
鳥山明先生としては『ドラゴンボール』の連載が終了したなかで、新たな続編となるアニメ制作に深く携わることに若干の抵抗があったと思います。とはいえ当時からすでに世界的な人気を獲得しつつあった『ドラゴンボール』のアニメは続けたい、という大人の思惑も強かったはずです。
そう考えると、確かに「GT」の意味は「G(ごめんね)T(鳥山先生)」に思えてきます。やはり俗説は本当なのでしょうか。ところが、『GT』のDVDボックスが発売されたとき、この俗説が真っ向から打ち破られます。鳥山明先生本人が、次のようなメッセージを出したのです。
「GTというのはクルマ用語で『グランツーリスモ』つまり速くて高性能なクルマってことですが、この場合は宇宙を駆け回るっていう設定でしたので『グランドツーリング』壮大な旅という意味を込めてGTとしました。」(一部抜粋)
GTと名付けたのが鳥山先生本人だったこと、そしてその意味が「グランドツーリング(壮大な旅)」であったことにも驚かされます。どう転んでも、「ごめんね鳥山先生」ではなかったのです。
なお、鳥山先生は上記のメッセージ内でドラゴンボールのアニメスタッフ陣に全幅の信頼を寄せていたことも語っており、連載から解放されて喜んでいた鳥山先生は、もう少しアニメを続けたいと言われてスタッフたちに任せることにしたそうです。鳥山先生本人がやったことは、主要キャラたちと一部メカのデザイン、イメージボードを作成しただけだったとのことで、この信頼関係があってこその、オリジナルストーリーだったともいえます。
ということで、『ドラゴンボールGT』の「GT」の意味は「グランドツーリング(壮大な旅)」でした。もし、俗説の方を流布してしまったな、という自覚がある人は、そっと「G(ごめんね)T(鳥山先生)」しましょう。
(片野)