1979年は「アニメが進化した年」だった? 『ガンダム』放映に『カリオストロの城』公開
1979年は若者文化が一気に広がった時代でした。ソニーの「ウォークマン」が発売され、大友克洋氏の初の単行本『ショート・ピース』が刊行されました。そして、『機動戦士ガンダム』がTV放映され、『ルパン三世 カリオストロの城』が劇場公開された記念すべき年でもあります。「テレビまんが」が「アニメーション」へと進化した1979年を振り返ります。
名作アニメが百花繚乱した1年
1979年は日本のアニメーションシーンが、新時代に突入したメモリアルな1年です。この年の4月に富野由悠季監督のTVアニメ『機動戦士ガンダム』(テレビ朝日系)が放送スタートしています。さらに12月には宮崎駿監督の劇場監督デビュー作『ルパン三世 カリオストロの城』が公開されました。
また、1978年に放映された松本零士原作のTVアニメ『銀河鉄道999』(フジテレビ系)は、1979年8月に劇場版『銀河鉄道999(The Glaxy Express 999)』として公開され、この年の邦画配給第1位となる大ヒットを記録。ゴダイゴが歌う主題歌「銀河鉄道999」は、前年から放送が始まった歌謡番組『ザ・ベストテン』(TBS系)で第1位に輝いています。
ほかにもオープニング曲「誰がために」で人気の第2期『サイボーグ009』(テレビ朝日系)、高畑勲監督が「日常アニメ」の真髄を極めた『赤毛のアン』(フジテレビ系)、出崎統監督の『ベルサイユのばら』(日本テレビ系)と、まさに名作アニメが百花繚乱した1年間でした。
「富野監督が好きそうな粒子」
モビルスーツ、スペースコロニー、ミノフスキー粒子……。聞き慣れない言葉が次々と使われたのが、後年「ファーストガンダム」と呼ばれるようになる日本サンライズ(後のサンライズ)制作の『機動戦士ガンダム』です。不気味な異星人が地球に攻めてくるという従来のSFアニメとは一線を画し、子供だましの番組ではないことはすぐに分かりました。
富野監督は『無敵超人ザンボット3』と『無敵鋼人ダイターン3』(ともにテレビ朝日系)を日本サインライズで成功させ、満を持してリアル路線のSFアニメに挑みました。モビルスーツは米国のSF小説『宇宙の戦士』に登場する「パワードスーツ」から、架空の物質であるミノフスキー粒子は「富野監督が好きそうな粒子」という理由からネーミングされたそうです。
富野監督のイメージする世界観を、キャラクターデザインの安彦良和氏、メカデザインの大河原邦男氏らが見事にビジュアル化し、画期的なSFアニメとして誕生しました。
コンピュータ好きの内向的な性格だった少年「アムロ・レイ」は、地球連邦軍の新兵器「ガンダム」のパイロットとして、敵対するジオン軍と戦うことになります。いくつも修羅場を経て、アムロは「ニュータイプ」へと急成長を遂げます。
アムロのニュータイプとしての覚醒ぶりは、日本のアニメシーンが新時代に突入したことを思わせるものがありました。かつて「テレビまんが」と呼ばれていた子供向け番組は、大人も楽しむ「アニメーション」として認識されるようになります。