同じ「主人公死亡」でも印象違う? ラストが驚き&感動のマンガ3選
アニメやマンガの物語終盤で、主人公が死んでしまうことは、決して珍しい展開ではありません。また、同じ「主人公死亡」という手法でも、作品によって「感動した」「ショックすぎる」と受け手の印象が違うこともあります。今回は、そのような「主人公死亡」展開が描かれたマンガ3作を振り返りましょう。
「主人公死亡」展開がもたらした後味、余韻の違い
アニメやマンガ作品において、「主人公死亡」は読者や視聴者にとって驚きが大きい展開なのではないでしょうか。今回は、物語終盤や最終話で主人公が死んでしまった、さまざまなタイプのマンガ作品を振り返ります。
※この記事では『海のトリトン』『BANANA FISH』『暗殺教室』の終盤の展開に触れています。
●『海のトリトン』
「マンガの神様」手塚治虫先生が手がけた『海のトリトン』は、主人公の「トリトン」が自身の身を捧げるクライマックスを迎えた作品です。
1969年から1971年にかけて「サンケイ新聞」で連載された同作は、小さな漁村に住んでいた少年の「矢崎和也」が赤ん坊のトリトンを拾ったことがきっかけになり、和也の一家が不思議な事件に巻き込まれていくというファンタジー作品です。その後に、トリトンは海人(うみびと)であるトリトン族の末裔であることが判明し、さらに地上征服計画を企む海の世界を統治する王「ポセイドン」を食い止めるために奔走します。
物語終盤では、不死身であるポセイドンとの一騎打ちになり、その戦いのなかで、眠りについていた代々のポセイドン一族が一気に覚醒しました。トリトンは、苦肉の策としてポセイドンたちをロケットに誘導し、地球外に打ち放つことに成功します。
そして、そのロケットにはトリトンも乗っており、ポセイドンとともに宇宙の彼方へ消えていくのでした。その際には、「ひとつ 小さな星が消えていきました トリトンのいのちと ともに」という哀愁のあるナレーションが綴られています。
「主人公死亡」と聞いて同作を思い出す人も多いようで、「トリトンの死は悲しいけど、息子のブルーがトリトンの名を継ぐというラストは素晴らしかった」などの声もあがっています。
ちなみに、1972年から放送されたアニメ版の最終話は、「トリトン族の祖先のせいでポセイドン族が苦しい目にあっていた」という事実が判明し、さらにポセイドン族の海底都市が崩壊して1万人が死亡するという、後味の悪い結末で知られています。富野喜幸(現、富野由悠季)氏の初監督作品であり、唯一、脚本を担当した最終話で当初の構想から大幅に改変したことで、虫プロを出禁にされたそうです。
●『BANANA FISH』
2018年にアニメ化もされたマンガ『BANANA FISH』(作:吉田秋生)は、1985年から1994年まで「別冊少女コミック」(小学館)にて連載された人気作です。同作も最後に、主人公が命を落としてしまいます。
『BANANA FISH』は、ストリートキッズのボスである主人公の「アッシュ・リンクス」とカメラマン助手の「奥村英二」が、「バナナフィッシュ」という謎の言葉の真相を巡って奔走する物語です。終盤でバナナフィッシュは違法薬物であることが発覚し、アッシュたちが奮闘した結果、マフィアに悪用される前に、バナナフィッシュに関する一切は消失します。
長い戦いが終わった後、苦楽をともにした英二が帰国することになり、見送るつもりはなかったアッシュは、彼からの手紙を読んで気持ちが抑えきれなくなり、やはり空港に向かおうとします。しかし、待ち伏せしていたチャイニーズギャングの一員である「ラオ・イェン・タン」が、復讐のためにアッシュの腹部に刃物を突き刺しました。そして、アッシュは図書館で英二の手紙の上に突っ伏した状態で絶命するのです。
読者からは、「途中から死ぬのは覚悟したけど、ページをめくりたくないくらいにアッシュの死が受け入れられなかった」「アッシュの死ほど虚無感が拭えなかったものはない」「ハッピーエンドに見せかけての急降下だったから、衝撃がすごかった」といった声があがっており、アッシュの死を受け止められなかった人が多かったことがうかがえます。