ゾンビ映画の元祖よりも早かった『ウルトラセブン』の「蘇生怪人」 背景に「予算不足」が?
1968年10月に公開された『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』はゾンビ映画の元祖と呼ばれ、そこから数多くのゾンビ映画が生み出されました。しかし、1968年5月に放送された『ウルトラセブン』第33話「侵略する死者たち」では、ゾンビ映画よりもいち早く死者が暗躍し、セブンを苦しめていました。
蘇った死者「シャドウマン」が暗躍する回
アメリカで1968年10月に公開された『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』は、現在でも続々と世界中で生み出されているゾンビ映画の元祖と言われています。しかし、1968年5月に放映された『ウルトラセブン』の第33話「侵略する死者たち」では、それよりも5か月も早く、死者が蘇って暴れるエピソードを放映していました。しかも、その「暴れる死者」は、製作予算の不足という理由から生みだされたというのです。
第33話「侵略する死者たち」では、ウルトラ警備隊の極東基地に運び込まれた遺体が何者かのコントロールによって、死体の影「シャドウマン」として動き出し、金庫室に侵入して機密情報が記されたマイクロフィルムを奪います。「セブン」は変身していたものの、「シャドウマン」によって小さくされてコップに閉じ込められてしまいました。
最終的には「ウルトラホーク」の援護があったおかげで、脱出したセブンによってシャドウマンと操っていた宇宙人は壊滅します。シャドウマンを操っていた正体も謎のままで終わり、登場したのは敵の宇宙船だけで、宇宙人も怪獣も出ずじまいでした。
そもそも『ウルトラセブン』の放送は中盤を過ぎると、製作予算が厳しくなっていました。第21話「海底基地を追え」では、戦争映画に使われた戦艦大和をロボット兵器「アイアンロックス」として再利用していましたし、第28話「700キロを突っ走れ!」に登場した「恐竜戦車」の戦車部分は、ほかの映画からの再利用でした。「シャドウマン」もそんな予算難の状況から生まれたアイデアのひとつだったようで、生身の人間にメイクをすればシャドウマンが完成するために安上がりだという理由から生み出されました。
くしくも、ゾンビ映画の元祖『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』のゾンビも、低予算のなかで生まれました。ほぼ同時期に登場した「蘇った死者」というキャラクターは、どちらも同じく「少ない予算」が背景にあったのです。
『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』は、日本では1968年には公開されず、ゾンビ映画ブームが到来するのは1979年の『ゾンビ』公開以降です。もし、もっと早くアメリカのゾンビ映画が公開されていたら、円谷プロが生み出した「シャドウマン」にもっと注目が集まっていたかもしれません。
(LUIS FIELD)