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なぜスクエニは「量から質」へ? 「転換がやむを得ない」ビジネス構造の問題とは

スクウェア・エニックスが先日、2024年3月期決算と新中期経営計画を明らかとしました。そこで打ち出したテーマは「量から質への転換」。 この新体制が、どのような影響を及ぼすのでしょうか。

「量から質への転換」を打ち出したスクウェア・エニックス

『ファイナルファンタジーVII リバース』を今年2月に発売したばかりのスクウェア・エニックスが、大きな方針転換を明らかにした
『ファイナルファンタジーVII リバース』を今年2月に発売したばかりのスクウェア・エニックスが、大きな方針転換を明らかにした

「ファイナルファンタジー」や「ドラゴンクエスト」をはじめ、数多くの代表作を持つスクウェア・エニックスは、国内でも有数のソフトメーカーとして名を馳せています。

 その動向には多くの人が注目を寄せており、2024年5月13日に発表された「2024年3月期決算資料」や、あわせて発表された2025年3月期から2027年3月期にわたる「新中期経営計画」の内容が大きな話題となりました。

 特に、新中期経営計画にあった「量から質への転換」という方針とフレーズに関心が集まっており、さまざまな意見が飛び交っています。果たして、スクウェア・エニックスに何が起きているのでしょうか。この「量から質」を軸に、同社のいまとこれからを読み解きます。

●スクウェア・エニックスの「量」とは?

「量から質」を解き明かすには、まず「量」について考える必要があります。SNSでは、同社が指す「量」について、「そんなにゲームを出していたっけ?」と疑問を浮かべる人も見かけました。

 実際のところ、2024年3月期(以下、前期)に当てはまる「2023年4月1日〜2024年3月31日」に、同社はどんなゲームをリリースしたのか。その代表的なタイトルを、まず振り返ってみましょう。

 2023年には、魔法に特化したオープンワールドアクションRPGの『FORSPOKEN』や歴代「ファイナルファンタジー」シリーズの楽曲をつめこんだリズムアクションゲームの『シアトリズム ファイナルバーライン』、ドット絵と3DCGを融合した「HD-2D」のグラフィックを魅力としたRPGの続編『オクトパストラベラー II』などのタイトルも発売されました。これらは1月から2月発売なので、前期には当てはまらないものの、この2か月だけ見ても、大きなタイトルが集中していることが分かります。

 前期は、 数々の賞を獲得したアドベンチャーシリーズのリマスターコレクション版『ライフ イズ ストレンジ リマスター コレクション』を皮切りに、待望のナンバリング最新作『ファイナルファンタジーXVI』、舞台化も果たした『結合男子』、マンガやTVアニメも人気の『インフィニティ ストラッシュ ドラゴンクエスト ダイの大冒険』、名作を蘇らせた『スターオーシャン セカンドストーリー R』、人気キャラを主人公に抜擢した『ドラゴンクエストモンスターズ3 魔族の王子とエルフの旅』と、2023年発売のものだけでも知名度の高い作品が並びました。

 そして2024年1月から3月には、チーム戦TPS(サードパーソンシューティング)『FOAMSTARS』が発売されたほか、2024年を代表する作品のひとつともいわれている『ファイナルファンタジーVII リバース』が満を持して登場しました。また基本無料型のタイトルでは、『ドラゴンクエスト チャンピオンズ』や『ファイナルファンタジーVII エバークライシス』などの正式サービスがスタートしています。

 こうしたタイトルの数だけ見ても、同社が十分な「量」を展開していることがうかがえます。

●「量」は開発本数だけではない

 開発本数は「量」を示す分かりやすい部分ですが、このほかにも「量」という言い回しに含まれる可能性のある要素はいくつもあります。例えば、各ゲーム作品のボリュームも、「量」と考えることができるでしょう。

 直近の作品でいえば、『FFVII リバース』のボリュームに驚いた人も多いはず。原作ではすぐに踏破したエリアも、本作ではたっぷりの寄り道要素が用意され、瞬く間に時間が過ぎる濃密なプレイ体験を味わえました。その圧倒的なボリュームを遊びつくし、クリアまで100時間以上かかった人も少なくありません。

 また、以前リリースした作品をリマスター化して再度製品化する流れは、各社それぞれ行っています。ですが、同社のリマスター作品は高解像度化に加え新要素を搭載する場合も多く、一般的なリマスターに留まりません。

 2022年に発売された『ロマンシング サガ -ミンストレルソング- リマスター』では新たな仲間が増えたほか、倍速機能にミニマップの表示、「NEW GAME+」の実装など、快適なゲームプレイを提供する機能を新たに追加しました。

 リリースする本数そのものに加え、作品によっては膨大なボリュームを用意し、リマスター作品にも力を入れるスクウェア・エニックス。一口に「量」といっても、同社のそれは多岐にわたっています。

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