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なぜスクエニは「量から質」へ? 「転換がやむを得ない」ビジネス構造の問題とは

なぜ転換を選んだのか。そして、求める「質」とは

「量から質への転換」は、今後どのような影響を与えるのか。 画像は『聖剣伝説 VISIONS of MANA』
「量から質への転換」は、今後どのような影響を与えるのか。 画像は『聖剣伝説 VISIONS of MANA』

 スクウェア・エニックスは、前期も多彩なゲームを展開しました。しかし、先日公開した新中期経営計画にて、「量から質への転換」を明言し、その方向性なども明らかにしています。

 なぜ、これほど大きく舵を切ることになったのでしょうか。結論から述べれば、デジタルエンタテインメント事業が増収減益となったのが大きな理由でしょう。

 決算資料を見ると、デジタルエンタテインメント事業は前期も変わらぬ水準の売上高を記録しました。ところが、「MMO及びスマートデバイス・PCブラウザ等で前年の売上高を下回った」「開発費の償却負担やコンテンツ制作勘定の評価損が前年比で増加した」との理由で、営業利益が大きく下がっています。

 売上高も重要ですが、売上高を維持しているのに営業利益が下がるのは、構造的な問題をはらんでいると言えます。この状態は会社としても健全ではなく、解消しなければなりません。そのための対策として選んだ施策が、「量から質への転換」なのだと考えられます。

●スクウェア・エニックスが求める「質」とは

「量から質」に転換するといっても、具体的にどのような対応を取るのでしょうか。その動きも、各資料からうかがえます。

 決算資料のなかで同社は、「新たな開発方針に合わないデジタルエンタテインメント事業の一部の主要コンテンツ開発を中止したことに伴い、コンテンツ等廃棄損220億8700万円を特別損失として計上した」と発表。これは、約221億円もの廃棄損にあたる複数本のゲーム開発を中止したという報告です。

 また、新中期経営計画を見ると、「お客様に長く愛されるポテンシャルの高いタイトルに人材と開発投資を重点的に配分」「各IPを支えるタイトル開発を担うコアチームの練度向上を図る」「全体ポートフォリオおよび個別IP双方の観点から最適な頻度とタイミングを考慮したローンチスケジュールを可能とする重層的なタイトルラインナップ構築を目指す」と書かれていました。

 こうした説明から、同社に関するこれからの動きを予想することができます。

 まずはっきりしているのは、開発本数そのものを絞るということ。予定していたゲームのいくつかは既に中止されていますし、「人材と開発投資を重点的に配分する」のであれば、今後の開発本数も自ずと絞られる結果になるでしょう。

 さらに、個々の開発体制も見直しが入る可能性も大です。「量」のくだりで解説したゲームのボリュームやリマスターにおける新要素の追加などが、ある程度抑えられる可能性があります。

 もちろん、売り上げに響くような削減は本末転倒なので、作品単体だけ見れば大きな影響は及ぼさないかもしれません。しかし、これまで「ファンサービス」や細部まで凝って作られていた部分は、今回の転換を機に減じる恐れはあります。

 また、「MMO及びスマートデバイス・PCブラウザ等で前年の売上高を下回った」という記述もあったので、スマホ向けやPCブラウザ系のゲームの開発、運営は厳しくなりそうです。MMOは、『ファイナルファンタジーXIV: 黄金のレガシー』の発売が今年7月なので、その結果次第で今後の展開が左右されることでしょう。

* * *

 もうじき発売を迎えるタイトル、例えば『聖剣伝説 VISIONS of MANA』(2024年夏予定)などは、その開発態勢を急に変えるのは難しいはず。こうした作品は、今回の転換にともなう影響はあまり受けないと思われます。

 これから発表される新タイトルの内容や、リリース総数がどうなっていくのか。今後の動向に、スクウェア・エニックスが打ち出す「量より質」が浮き上がってくることでしょう。

『ファイナルファンタジーVII リバース』
(C) SQUARE ENIX CHARACTER DESIGN: TETSUYA NOMURA / ROBERTO FERRARI LOGO ILLUSTRATION:(C) YOSHITAKA AMANO

『聖剣伝説 VISIONS of MANA』
(C) SQUARE ENIX

(臥待)

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