「えっ、なんで?」柱で人気最下位の悲鳴嶼 『鬼滅』原作好きほど岩柱のトリコになるわけ
『鬼滅の刃』の岩柱「悲鳴嶼行冥」といえば、筋骨隆々、「南無阿弥陀仏」の羽織、白目から絶えず流れる涙など、ひときわ目立つ存在です。そのような彼が、いかに「影の人気者」となったかを紐解いていきます。
尻上がりに人気上昇? コアなファンの多い悲鳴嶼さん
『鬼滅の刃』において鬼殺隊の「柱」といえば、強者ぞろいであると同時に人気キャラ集団ともいえます。そのなかでも岩柱「悲鳴嶼行冥」は、強さでも読者人気でも例外的な存在といえるかもしれません。
岩の呼吸の使い手である悲鳴嶼は、岩柱として鬼殺隊の上位に君臨しています。恵まれた体躯と怪力がその強さを裏付けており、目が見えないハンデを背負いながらも鬼殺隊最強の実力者です。
ところが、巨体と白目、巨大な数珠と念仏の書かれた羽織などの独特な容姿は、読者にあまり良い第一印象を残せなかったのかもしれません。「週刊少年ジャンプ」にて開催された第1回人気投票の順位は62位で、得票数はなんと3票でした。柱のメンバーで次に順位が低かったのは37位の宇髄天元で、悲鳴嶼は柱として断トツの最下位を記録しています。
とはいえ、この投票が行われたのは原作の「無限列車編」が連載されていた時期です。悲鳴嶼の活躍は柱合会議くらいのもので、キャラクターはほとんど掘り下げられていませんでした。
しかも柱合会議では炭治郎や禰豆子に冷たい言葉を放っており、その影響もあって悲鳴嶼に否定的な読者が多かったのかもしれません。「炭治郎が修行で切った岩」ですら4票を獲得しており、悲鳴嶼の存在感はほとんどありませんでした。
そして柱稽古や最終決戦の活躍を経て、連載終了後に第2回人気投票が行われます。そこで悲鳴嶼は大きく順位を伸ばして22位を記録しました。票数も843票と大幅に増加しています。
ただ原作では大きな出番があったものの、まだアニメでは活躍が描かれていませんでした。すでにアニメで活躍していた冨岡義勇は1万票以上、他の柱も3000票以上を獲得しており、差は開くばかりです。
この結果だけを見れば不人気の烙印を押されそうですが、原作の連載が終わってからも悲鳴嶼の人気は少しずつ伸びていきます。実は、『鬼滅』マニアやマンガ、アニメ好きほど岩柱を推したくなる秘密が隠されており、一部で熱烈に愛される影の人気キャラに成り上がりました。
というのも悲鳴嶼には、ほかのキャラクターにはない特別な魅力がありました。それは、少年マンガのセオリーを真っ向から破壊した生き様です。多くのマンガにおいて、「設定の上では最強」「巨漢」「怪力」といった要素は、いわゆる「かませ犬」の定番です。悲鳴嶼はそれをすべて押さえており、多くの読者から「すぐに死ぬ」と見られていたようでした。
しかし、いざ悲鳴嶼が本格参戦すると読者の期待は思わぬ形で裏切られてしまいます。悲鳴嶼は身も心も本当に強く、最後まで「鬼殺隊最強」の設定を貫き通しました。このギャップが読者の心を打ち、連載が終わってからも評価がじわじわと伸び続け、今や押しも押されもせぬ愛されキャラとなったのでしょう。
また、外伝小説や公式ファンブックなどでも悲鳴嶼の魅力が掘り下げられています。そこでは悲鳴嶼が柱の面々から厚く信頼されていること、まるで親のようにほかの柱たちを見守っていることが明かされました。柱同士のカップリングを後押しするようなセリフもあったため、ほかの柱ファンでさえも、悲鳴嶼の人柄に胸打たれたのではないでしょうか。
アニメでは杉田智和さんが悲鳴嶼役を務めており、声優ファンの心をつかんだことも人気上昇にひと役買っていそうです。悲鳴嶼の活躍が目白押しなアニメシリーズ最新作「柱稽古編」は、さらに悲鳴嶼ファンを増やしてくれるかもしれません。
※禰豆子の「禰」は「ネ」+「爾」が正しい表記
(ハララ書房)