人喰いは怪物の証! ジャンプ系マンガはカニバリズム取り入れすぎ?
「週刊少年ジャンプ」には「人喰い」の要素を取り入れた作品が結構、見られます。これは単なるショック演出ではなく、深い意味が込められているのかもしれません。恐怖と禁忌を象徴する「カニバリズム」がなぜこれほど多くのマンガで描かれるのでしょうか。
人を食べる存在は人類の敵対者

集英社より発売されている「ジャンプ」は、「週刊少年ジャンプ」や「ジャンプ+」など多岐にわたります。そのなかでも人気の作品には、「人喰い」の要素を取り入れた作品が少なくありません。人間が人間の肉を食す、いわゆる「カニバリズム」にはどのような意図が隠されているのでしょうか。
●封神演義
『封神演義』(著:藤崎竜)は、中国の明代に成立した古典『封神演義』を題材にしたマンガです。主人公「太公望」の明るく余裕を失わない性格や、個性的な仙人たち、不思議な力を秘めた宝貝(ぱおぺい)を駆使したバトルが魅力です。
その『封神演義』では、「妲己(だっき)」の人肉ハンバーグを作るエピソードが強烈なインパクトを放っています。
「伯邑考(はくゆうこう)」は、禁城に幽閉された父「姫昌(きしょう)」を解放してもらうため、貢物を持って「紂王」のもとを訪れました。しかし捧げものとして持参した歌う猿「白面猿猴(はくめんえんこう)」が、紂王の側に控える妲己に襲いかかってしまい、これにより伯邑考はハンバーグ(原作古典では肉餅)にされてしまいます。しかも姫昌は処刑を免れるため「私はハンバーグが大好物なのだ」と、それが変わり果てた息子だと分かっていながら知らないフリをして口にするのでした。
一連のシーンはマンガ化にともなうアレンジはされているものの、原作古典の展開に忠実です。息子を料理して父親に食べさせるという、目を背けたくなるような所業が描かれることで、妲己の邪悪さが際立ちます。
●ONE PIECE
『ONE PIECE』にもカニバリズムと思われるシーンが描かれました。「ビッグ・マム」こと「シャーロット・リンリン」は幼少期、食事に夢中になるあまり、そばにいた孤児院の仲間や愛する「マザー・カルメル」まで食べてしまったようなのです。
前述のマンガ『封神演義』と同様、実際に食べるシーンはカットされていますが、このエピソードからはビッグ・マムが生まれながらにして一切の悪意なく愛するものを食べてしまう、怪物的な存在であることが伝わります。
また、このシーンは悪魔の実の能力を継承する方法についても、大きなヒントを与えてくれます。ビッグ・マムは悪魔の実を食べたことがないにも関わらず、マザー・カルメルのものと思われる「ソルソルの実」の能力を獲得しているからです。
おそらく能力者を食べることで能力を奪えるのでしょう。ビッグ・マムは丸ごと食べてしまったため、どの部位を食べればよいか、どこに悪魔の実の能力が宿っているのかという点については明示されていないものの、黒ひげが白ひげの「グラグラの実」の能力を奪ったシーンから推測する限りにおいて、脳細胞に悪魔の実の能力が宿っている可能性が考えられます。黒ひげ海賊団のメンバーの多くが能力者狩りをして、能力を奪っている点も見逃せません。