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「今?」「だいぶ印象変わる」 実写化が好評だった小説のアニメ化が増えた理由は?

最近、昔実写化された小説のアニメ化が増えている気がしませんか? 全く同じ内容ではなく、新しく生まれ変わっている作品が多いのはなぜなのでしょうか。

大人に向けて懐かしさを、若い世代には新鮮な体験を

アニメ映画『がんばっていきまっしょい』ポスタービジュアル (C)がんばっていきまっしょい製作委員会
アニメ映画『がんばっていきまっしょい』ポスタービジュアル (C)がんばっていきまっしょい製作委員会

 1996年に出版された敷村良子さんの青春小説『がんばっていきまっしょい』が、アニメ映画となって2024年10月に公開予定です。発表時は「なぜ、今になってアニメ化を?」と驚いた人もいたのではないかと思います。

『がんばっていきまっしょい』は1998年に田中麗奈さん主演で実写映画化され話題となり、2005年には鈴木杏さん主演でTVドラマ化もされた人気小説です。筆者も公開当時にこの映画版を観ていて、さわやかで楽しい映画だったことを覚えています。「キネマ旬報ベストテン」邦画の第3位に選ばれるなど、批評的にも高く評価されていました。

『がんばっていきまっしょい』だけでなく、近年、かつて実写化された有名小説をアニメにする企画が続いています。2019年『ぼくらの七日間戦争』(原作:宗田理)や、2020年『ジョゼと虎と魚たち』(原作:田辺聖子)などが劇場アニメとして公開されたほか、TVアニメでも2020年に『池袋ウエストゲートパーク』(原作:石田衣良)、『富豪刑事』(原作:筒井康隆)などが企画されました。

 かつての実写でのヒット作を、アニメで復活させるこの傾向が生まれたのはどうしてなのでしょうか、考えてみたいと思います。

『がんばっていきまっしょい』は90年代に一世風靡した作品です。当時、ティーンエイジャーだった世代は今、40代となり、家庭を持っている人も多いでしょう。その世代の子供はすでに、当時の親たちの年齢に近くなっているかもしれません。つまり、今は小説出版当時から世代が一回りした状態です。

 そう考えると、このタイミングでかつての人気作品をアニメ化することは、「二世代コンテンツ」を作れる可能性を秘めています。

『ぼくらの7日間戦争』に関して、小説を出版しているKADOKAWAのアニメ事業局の工藤大丈局次長は、東洋経済ONLINEの取材で「基本的なターゲットは、やはり10代から20代前半ぐらいまでのアニメ好きな若い人たち。まずは彼らに楽しんでもらいたい。そのうえで、実写映画を観ていた親世代にも訴求できたら」と語っています。

 かつて、これらの小説が映像化された時は、アニメよりも実写作品の方が人気の高い時代でしたが、今はアニメ人気が高いので、新しい世代にアピールするにはアニメの方が良いという判断もあるでしょう。

 もうひとつ付け加えれば、観客だけでなく、作り手にもかつてこうした小説や映画作品を若い頃に観たという世代が意思決定権を持つ世代になっていて、青春時代に親しんだ作品に挑みたいというモチベーションを持っている人もいるかもしれません。さらに、今はアニメの製作本数が多く、マンガやゲーム、ライトノベルなど、定番の原作の他にもさまざまな原作をアニメが扱うようになっており、そこに一般文芸も加わってきているという現状があります。

 これらの企画で特徴的なのは、原作やかつての実写作品に忠実にアニメ化しているわけではなく、むしろ「かなり大胆なアレンジを施す」ケースが多いことです。昨今はマンガ原作の作品を中心に、原作に忠実であることが求められることが多いことを考えると、珍しい傾向です。

 これについては、やはり昔の小説、実写作品のテイストを令和の時代に再び描くのであれば、舞台を現代に置き直すことが求められ、価値観の変化などを反映した内容にして、現代の観客により強い訴求力を持たす狙いがあると思われます。

 こうした名作小説が時を経てアニメ化される作品の先行事例は、2006年の細田守監督の『時をかける少女』(原作:筒井康隆)でしょう。この作品はかつての原作小説と地続きの世界として描かれながらも、主人公を始め登場人物を一新し、新たな魅力を備えた物語として高く評価されています。

【画像】え…っ? 「田中麗奈や宮沢りえが若ッ」「今見るとすごいメンツ」 これが懐かしの実写『がんばっていきまっしょい』や『僕らの七日間戦争』です(6枚)

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