マグミクス | manga * anime * game

セガサターン背面にあった「謎の拡張スロット」 ハードの価値がプッシュされるも影が薄かった?

毎日遊んでいるゲームハードでも、すべての機能を覚えている人は意外と少ないのではないでしょうか。今回は2024年11月で生誕30周年を迎える「セガサターン」にフォーカスし、本体の背面に隠されていた「謎の拡張スロット」の使い道を振り返ります。

周辺機器を買わないユーザーは知らない、謎の拡張スロット

「セガサターン」背面の拡張スロットのカバー(マグミクス編集部撮影)
「セガサターン」背面の拡張スロットのカバー(マグミクス編集部撮影)

 毎日遊んでいるゲームハードでも、「全ての機能を把握している人」は意外と少ないのではないでしょうか。例えば、たいていのゲームハードにいくつか備わっている端子類です。コントローラーやACアダプターなどの接続端子は使用頻度も高く、そのゲームハードのユーザーにとって、なじみ深い方がほとんどかもしれません。

 しかしなかには、特定の周辺機器をつなげるためだけに存在する「端子」があることも。周辺機器を買わないユーザーの場合、一回も使われることなく役目を終えるケースも考えられます。

 今回取り上げるゲームハード「セガサターン」も例に漏れず、1994年11月22日の正式リリースから次世代ハード「ドリームキャスト」へバトンを渡すまで、実に多種多様な周辺機器が展開されました。

 今回は同ハードの背面に備わっていた「拡張スロット」にフォーカスし、使い道をはじめ、その機能を改めて振り返ります。

 本題の拡張端子について掘り下げる前に、まずはセガサターンの形状を思い出してみましょう。本体前面にはコントローラーの入力端子があり、上面にはソフトを読みこませるCDカバーやパワーメモリーを差し込むためのカートリッジスロットなどが見られます。電源端子とA/V出力端子類は背面に搭載済み。今回のお題である拡張スロットも、この部分に備え付けられています。

 コントローラーの入力端子や上面のカートリッジスロットは、前情報がなくともその形状からおおよその使用シチュエーションが見えてきますが、背面の拡張スロットは初見だと存在すらなかなか気が付きにくいかもしれません。背面の電源カバーを開けると、見えてくるのはセガサターン本体の寿命を司るボタン電池と基板類です。その真下に広がるのが、パネル状の拡張スロットとなります。

 拡張スロットに差し込む周辺機器は、セガやビクター(当時)から数種類がリリースされました。その名も「セガサターン ムービーカード」といい、拡張スロットへ差し込むことで、セガサターン上でビデオCDの再生が可能になる周辺機器です。

 現代でその名前を聞くことはほとんどありませんが、VCD(ビデオ・コンパクト・ディスク)とは、VHSとDVDの間をつなぐ時代に登場したメディアフォーマットです。1時間ほどの動画や音楽を記録ができ、セガサターン向けにも専用ソフト『ルナ シルバースターストーリー MPEG版』が登場しました。通常版とゲーム内容に大きな変化はないものの、ムービーカードを用意することで、より高精細なアニメーションを楽しむことができました。

 ムービーカード専用ソフトは『ルナ シルバースターストーリー MPEG版』のみですが、対応ソフトは10本を超えるラインナップが展開されています。例えば『ウルトラマン図鑑』は、特撮シリーズ「ウルトラマン」や「ウルトラセブン」などのデータを、画像や動画といったビジュアル要素をまじえながら紹介するデジタルメディアです。同じく『サクラ大戦 蒸気ラジヲショウ』もファンディスク的な作品で、「サクラ大戦」シリーズのキャラクターが出演する外伝エピソードをはじめ、舞台「サクラ大戦歌謡ショウ」のダイジェストなどを収録しています。これらの対応ソフトは、別途ムービーカードを拡張スロットへ装着することで、さらに高画質化した映像が流れるようになりました。

 くわえて当時の販促チラシを見ると、「タイムスキップやシーンNo サーチはCDならではの高速アクセス(中略)多彩な機能をコントロールパッドで簡単に楽しめます」という文言が書かれていました。また、商品ラインナップには3D対戦格闘ゲーム『バーチャファイター2』のキャラクタープロフィールや必殺技を紹介する攻略ビデオCDもあり、単にムービーカード専用/対応ソフトをプッシュするのではなく、「ビデオCDプレイヤーとして捉えたセガサターンの価値」が押し出されていたように思えます。

 上記のムービーカード発売に合わせ、1995年6月23日には「フォトCDオペレーター」「電子ブックオペレーター」と呼ばれる2種類の製品が市場デビューを果たします。両品ともセガサターンに読み込ませて使うシステムディスクで、電子ブックやフォトCD写真集をセガサターン上で再生するための必需品でした。セガはこうした3つの新製品を展開するにあたり、「セガサターン マルチメディア・システム」というコピーを提唱し、メディアプレイヤーという側面から見たセガサターンの重要性を、同ハードの発売から間もない段階でアナウンスしていました。

※本文の一部を修正しました。(2024.5.29 12:10)

(龍田優貴)

【画像】え、知らなかった! これが「セガサターン」背面の拡張スロットのカバーを開けた写真です(5枚)

画像ギャラリー