なぜこうも複雑なのか 『ガンダムW』ウイングガンダムゼロのややこしい設定を紐解く
『ガンダムW』のMS「ウイングガンダムゼロ」は特徴的な翼もあってか人気の機体ですが、その登場から今日にいたるまでの来歴を見ていくと「ややこしいこと」に気が付きます。複雑な設定まわりを整頓してみましょう。
名前に「カスタム」と付くけど同じ機体…?
「ガンダム」シリーズには、作品ごとに多くの派生作品が存在します。なかには派生作品が発表されるたびに、設定が増えて複雑極まりなくなってしまった機体、などというものも見られました。2018年にNHKが制作したアンケート企画番組「発表!全ガンダム大投票」にて高い人気を証明した「ウイングガンダムゼロ」も、そうした「複雑な」機体のひとつです。
ウイングガンダムゼロは、1995年から翌96年にかけTV放送されたアニメ『新機動戦記ガンダムW』に登場するモビルスーツ(MS)で、物語の当初から登場した5機のガンダムを生み出した博士たちの手によって、最初に設計された「ガンダム」でした。危険なために封印されていたところを、ガンダムパイロットのひとりである「カトル・ラバーバ・ウィナー」が残されていた設計図から完成させます。
カトルが搭乗したウイングガンダムゼロは、主人公の「ヒイロ・ユイ」たちの前に現れ、圧倒的な性能を見せつけました。その後、紆余曲折ありライバルの「ゼクス・マーキス」の手に渡り、のちに機体を交換する形でヒイロに渡ってからは、物語の最後までヒイロが搭乗しています。
そのウイングガンダムゼロを、オリジナルビデオアニメ(OVA)『新機動戦記ガンダムW Endless Waltz』にあわせ、メカデザイナーのカトキハジメ氏がブラッシュアップし、かくて「ウイングガンダムゼロ(EW版)」は誕生しました。同作はTV版から1年後に起きた騒動を描いており、デザインは違うもののTVシリーズに登場したウイングガンダムゼロと同じ機体だといわれています。
そのため本来はEW版もTV版と同じ「ウイングガンダムゼロ」なのですが、TV版と区別するために、かっこをつけた「(EW版)」と表記されるのが現在の主流です。当初は「ウイングガンダムゼロカスタム」の名称が多く使われたため、こちらの名前が馴染んでいる人も多いでしょう。
いつごろからEW版と呼ぶように変わったのか、正確なところは不明ですが、ゲーム作品やプラモデルの商品展開においては、2010年ごろからこの表記ないし呼称が見え始めます。恐らくはそのころから2010年代半ばにかけて移り変わっていったのでしょう。