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『包丁人味平』 ひとりの男を料理の世界に導いた、「料理マンガ」のパイオニア

「トンデモ描写」ありつつも、第一線の料理人やリアルな現場を紹介

『包丁人味平』Kindle版第2巻(マイナビ出版)。「包丁試し編」のエピソードを収録
『包丁人味平』Kindle版第2巻(マイナビ出版)。「包丁試し編」のエピソードを収録

『包丁人味平』の物語は、和食の世界で「名人」と誉れ高い料理人、塩見松造の息子である味平が、父とは真逆の「大衆料理」の道を目指し、奮闘していくというもの。

「骨だけになった鯛を水槽で泳がせる、塩見松造による『活け造り』」や、「包丁試し」勝負での「アイスクリームのフライがコロッケにすり替わる」描写。「お湯に塩のみで味付けする『潮勝負』の際、味平の汗が鍋に落ちて、味が変わってしまった」エピソードや、「無法板の練二」による「白糸バラシ」に「地雷包丁」、そして「ひばりケ丘カレー戦争」編での「麻薬入りのブラックカレー」などなど、劇中のトンデモ描写は枚挙にいとまがありません。

 しかし、その一方で『包丁人味平』は、洗い方からチーフコック、花板などといった料理人のヒエラルキーや、トップに至るまでの修行の大切さを伝え、コック出身で帝国ホテルの社長に就任した犬丸徹三氏や、1964年の東京オリンピックで男子選手村の料理を担当した帝国ホテルの村上信夫氏、女子選手村を担当した横浜ホテルニューグランドの入江茂忠氏、ホテルニューグランド初代料理長、S・ワイル氏など、料理の業界に関する知識や、当時最前線に立っていた料理人たちの存在を作中で紹介しています。

 今でこそTV番組などにプロの料理人が登場し、世に知られた有名シェフも多くいますが、1970年代にそれを行った『包丁人味平』の功績はかなり大きいのではないでしょうか? 渡辺シェフ以外にも、このマンガを読んで料理人を志したという方は多いと思われます。『包丁人味平』は昭和の骨太なマンガですが、今の若い世代にも読んでほしい作品です。

(渡辺まこと)

【画像】『包丁人味平』希少なヒロインも登場した「カレー戦争」編

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