マグミクス | manga * anime * game

オーディションで「挨拶」できない声優も? 「萌えキャラNG」指示で分かれた命運【この業界の片隅で】

アニメ業界の片隅で生きる著者・おふとん犬が、業界の片隅で拾ったさまざまな話題を取り上げて解説します。第6回は、とある新番組に向けて行われた、出演声優オーディションの体験記。スタッフの一員として審査に参加したことで、見えてきたものについてお話します。

礼儀だけじゃない、オーディション現場で「あいさつ」が必要な理由

美少女アニメでも「萌えキャラ」での表現はNGの場合も(画像:イラストAC)
美少女アニメでも「萌えキャラ」での表現はNGの場合も(画像:イラストAC)

 とある新番組のスタッフの一員として、出演声優オーディションで審査をする機会がありました。オーディション参加声優は、実に数百人。朝から晩まで実に12時間近く、音響スタジオにこもって演技に耳を傾けるわけですから、審査員にも体力と忍耐力が求められます。休憩時間は30分ほど。スタジオの手配して下さった弁当が、唯一の心の安らぎでした。

 オーディションに挑む声優には、自分の番が終わるまで、そんな安らぎすら与えられません。せっかく巡ってきたチャンスです。5分から10分という短い間に、持てる力のすべてを出し切らねばならないわけですから、緊張するのも当然です。収録ブースの前の待合いスペースには、目に見えてピリピリした空気が漂っています。

 ただ、集中しすぎるのも、考えものかもしれません。前もって練習してきたオーディション用台本の演じ方を、何度も頭の中で繰り返しているのでしょう。自分の世界に入り込むあまり、あいさつするのを忘れている方が、ままいるのです。

 オーディションの全体スケジュールは、いらっしゃる声優それぞれの入り時間によって、かなり綿密に定められています。それを可能な限り守るよう、待合いスペースの前では、スタジオのスタッフが来た声優を逐一チェックしています。あいさつがなければ、誰が来たのか把握できないのです。マスクを着けている場合など、かなり顔の売れていらっしゃる方でも、どなたかよく分からない場合があります。あいさつをするのは、礼儀だからという以上に、進行を滞らせないために不可欠なことなのです。

 あいさつを忘れる声優は、ほとんどの場合、待合いスペースに置いてあったり壁に貼ってあったりする監督や音響監督からの現場指示も見落としてしまっているようでした。今回の場合は、作品の監督と音響監督が事前に相談して、比較的細かな指示をキャラごとにつけて壁に貼り付けていました。「ちゃんとこれに目を通しましたか?」と、スタッフから声をかけることはできません。そんなことをすれば、特定の声優に不正に手を貸したと見られかねないからです。

【画像】劇場版の公開が迫る『SHIROBAKO』では声優オーディションの場面も(5枚)

画像ギャラリー

1 2