これが真相か「アムロは鳥取出身」説 元サンライズの中の人に聞いてわかったこと
国民的アニメ『機動戦士ガンダム』の主人公アムロは「山陰(鳥取)出身」……まことしやかに語り継がれる「噂」について、既存情報を整理、検証した上で、当時の「サンライズの中の人」に話を聞きました。
「アムロが鳥取県生まれ?」古谷徹さんも驚いた
TVアニメ『機動戦士ガンダム』(1979年)の主人公「アムロ・レイ」の出身地については、これまでもいろいろな噂が流れていました。
『ガンダム』の生みの親、富野由悠季監督は2010年に鳥取県で開催されたトークショーで、「アムロがお母さんと別れるシーンの背景はほとんど鳥取砂丘のつもりでやっていました」と語ったそうです。この発言は大きく取り扱われ、「アムロの出身地は鳥取」と話題になりました。
もうひとつ、大きな話題になったのが、2015年の日本海新聞に掲載されたコラムです。『ガンダム』でアニメーションディレクターを務めた安彦良和さんによるコミック『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』の最終巻(特別編)には、アムロが山陰(出雲大社、松江城、鳥取砂丘など)を訪れるエピソードがあり、その理由について「主人公アムロ・レイが鳥取出身だからとインタビューに答えている」とコラムに記されていたのです。このときも大きな話題となり、アムロ役の声優を務める古谷徹さんも「アムロが鳥取県生まれ?」と驚いていました(Twitter〈当時〉、2015年11月17日)。
ただし、このコラムの根拠となった安彦さんへのインタビューが何だったのかは判然としません。『THE ORIGIN』単行本に掲載された「特別インタビュー」では、山陰を舞台にした理由について、安彦さんは「ハヤトの御先祖の出身地だから」と答えています。
アムロの故郷が山陰地方であることは、かなり早い段階から言われていました。1979年発行の雑誌『アニメック』8号(ラポート)には、富野監督による第13話から第15話の解説として「アムロの実家はズバリ山陰地方ですし、ククルス・ドアンの島は五島列島付近だとお考えください」と記されています。日本らしくないように見える家屋は「今よりも一世代か二世代未来の建物」と丁寧に説明されていました。
『アニメック』が編集した『機動戦士ガンダム大事典』(ラポート)には以下のように記されています。「サイドの建設技士でもあったテムの仕事柄、アムロは幼少の頃から各地のサイドを転々としていた。故郷は現日本の山陰地方にあり、母カマリアは父と別居して今もここに住んでいる」。
一方、劇場版『機動戦士ガンダム』(1981年)では、ガルマを北米で倒した後、ホワイトベースが日本を通過しなかったため、カナダのプリンスルパートで母と再会したことになっています。パンフレットには地図とともにプリンスルパートが「アムロの生まれ故郷」と記されていました。