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『H×H』33巻から「ゴンが主人公」ではなくなった? 表記の変化が「意味深」

『HUNTER×HUNTER』の主要キャラであるゴンやキルアが登場しなくなってもう何年も経ちました。彼らの冒険は終わってしまったのでしょうか?

ゴンやキルアはもう出てこないの?

画像は『HUNTER×HUNTER 選挙編 DVD&Blu-ray BOX』(バップ) (C)POT(冨樫義博)1998年-2011年 (C)VAP・日本テレビ・マッドハウス
画像は『HUNTER×HUNTER 選挙編 DVD&Blu-ray BOX』(バップ) (C)POT(冨樫義博)1998年-2011年 (C)VAP・日本テレビ・マッドハウス

「ゴン=フリークス」と「キルア=ゾルディック」を中心にさまざまなエピソードが描かれていた『HUNTER×HUNTER』では、もう何年にもわたってふたりの出番がありません。果たして彼らの物語は完結してしまったのでしょうか。

●王位継承を巡る暗闘と幻影旅団のヒソカ狩り

 2024年5月時点の『HUNTER×HUNTER』では主にふたつのエピソードがパラレルに進行しており、多くの登場人物の思惑が入り混じっています。

 ひとつは「暗黒大陸」行きの巨大船で繰り広げられるカキン帝国の王位継承をめぐる暗闘です。「ナスビ=ホイコーロ国王」以下、14人の王子やその護衛たちの行動原理や思考が分厚く描かれており、おおよそ少年マンガらしからぬ容赦のない展開が繰り広げられます。

 それと同時並行で描かれているのが裏切り者の「ヒソカ」を狙う幻影旅団です。こちらも人数が多く、「クロロ」「ノブナガ」「フランクリン」「フィンクス」「ボノレノフ」「マチ」「シズク」「フェイタン」に加え、ゾディアック家の「カルト」と「イルミ」も乗船していました。さらに王子の息のかかったヤクザ組織まで登場し、王位継承と同じくらい複雑化しています。

 そして、すでに表面化している状況の水面下では、暗黒大陸の探索を目的とする「ジン」や「ビヨンド・ネテロ」一党、巨大船の運行を管理している「十二支ん」メンバー、「ツェリードニヒ王子」が持つ緋の瞳を求める「クラピカ」の思惑が渦巻いています。

 こんなにも多くの登場人物が閉鎖空間で異なる目的のために行動しているのですから、相当なシナリオ構成力がなければ描ききるのは難しいでしょう。ゴンやキルアが乗船していれば、彼らの視点が中心になったと思われますが、進行中のエピソードでは「視点の固定」を許さない状況が続いているようです。

『HUNTER×HUNTER』において現在進行中の「王位継承編」のようなシナリオ構造は初めてではありません。「グリードアイランド編」は各陣営が駆け引きをしながらカードのコンプリートを目指していましたし、「キメラ=アント編」でもハンターやキメラ=アントたちが自分の目的のために、死力を尽くしていました。

 複数の視点や目的が組み合わさって巨大な状況が描かれるシナリオ構造は、冨樫義博先生が得意とするところです。その集大成が暗黒大陸へ向かう巨大船「B・W(ブラックホエール)号」でのイベントなのでしょう。

『HUNTER×HUNTER』の単行本の冒頭には登場人物紹介欄があります。実は暗黒大陸を目指すエピソードが始まる単行本33巻以降、ゴンの紹介欄から「主人公」の表記が消えていました。

 32巻までは「この物語の主人公。」と明記されていたのですが、その後は「父・ジンを追いハンターになる。キメラ=アントとの戦いの後遺症でオーラが視えない。帰省中。」(34巻より)などとされており、物語の構造が大きく変化していることが分かります。

 おそらくゴンの物語は世界樹の頂上でジンと語り合うエピソードで、いったん完結したのでしょう。『HUNTER×HUNTER』が父親を求めるゴンの物語だったとするなら、ここで終了していてもおかしくありません。

 しかしタイトルはテーマと深い関係性があります。冨樫先生は最初から『HUNTER×HUNTER』というタイトル通り、複数のハンターの生き様が交錯する物語を想定していたのかもしれません。ゴンは物語世界への案内役を兼ねたハンターのひとりに過ぎなかったのではないでしょうか。

【画像】えっ、まったくの別人! これが変わり果てたゴンの姿です

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