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「ジャンプ」主人公を苦しめるラスボスの共通点 「精神操作」は強敵の証?

バトルマンガといえば、主人公がライバルと死力を尽くして戦うシーンが印象的です。ただ厄介なのが精神操作攻撃を仕掛けるライバルたちでしょう。この記事ではそのような「絡め手」を使う強敵たちに焦点を当ててみます。

彼らを通じて主人公は強くなる

画像は『BLEACH [尸魂界・救出篇5]』(アニプレックス) (C)久保帯人/集英社・テレビ東京・dentsu・ぴえろ
画像は『BLEACH [尸魂界・救出篇5]』(アニプレックス) (C)久保帯人/集英社・テレビ東京・dentsu・ぴえろ

 バトルマンガといえば厳しい修行を積み、つらい試練を乗り越えた主人公が全力を尽くしてライバルと戦う展開の面白さが魅力です。しかしある種の強敵は「精神操作」を使いこなすことで、せっかく成長して強くなった主人公のパフォーマンスを削いだり、有無を言わさず制圧したりします。

 強いのに「絡め手」を使ってくるライバルたちを振り返り、その奥底にある共通点について考えてみます。

●藍染惣右介

『BLEACH』(著:久保帯人)に登場する「藍染惣右介」の斬魄刀「鏡花水月」の能力は完全催眠です。何かを命令して強要することはできないものの、斬魄刀解放の瞬間を見せただけで催眠の発動条件をクリアできるという点が圧倒的に強く、護廷十三隊のメンバーに術をかけたと気付かせないまま、自分の死を偽装していました。

 直接的な戦闘力に欠けるから「完全催眠」を使いこなしていると思われた愛染ですが、実は同じ護廷十三隊の隊長格と比べても圧倒的な実力の持ち主です。実力があるにも関わらず計略を練って頭脳プレイまで仕掛けてくる愛染は、主人公「一護」が乗り越えるべき高い壁としてふさわしい人物だといえるでしょう。

●双子座のサガ

『聖闘士星矢』(著:車田正美)に登場する双子座の黄金聖闘士「サガ」は、善の心と悪の心を持つ二重人格者です。彼は「幻朧魔皇拳」という魔拳で相手を洗脳し、意のままに操ります。その効果は強力で、被術者の目の前で人が死なない限り、決して洗脳が解けることはありません。

 サガはアテナを補佐する教皇「シオン」を殺害して成りすましており、獅子座の黄金聖闘士「アイオリア」を洗脳して獅子宮を守らせたり、十二宮のラストで「聖矢」と激闘を繰り広げたりしました。

 前述の愛染と同様にサガは魔拳を使わなくても極めて高い戦闘力を誇ります。十二宮編で敗れた後も「冥闘士(スペクター)」として復活し、ストーリー展開上、重要な役割を果たしました。善と悪の心に引き裂かれ葛藤する姿や、そのカリスマ性にしびれた人は多いでしょう。

●うちは一族

『NARUTO』(著:岸本斉史)にはさまざまな形で幻術が使われています。そのなかでも最も強力な幻術が「うちはイタチ」の瞳術「万華鏡写輪眼」によって行使される「月詠」です。月詠は発動中の瞳を見た相手の時間感覚を自由自在に操作し、自分の精神世界に引きずり込みます。

 そして『NARUTO』のラストバトルで打ち破ることになる「無限月詠」は、地上に存在するすべての生命体を「月読」の世界に落とし込む大幻術でした。ただし術者の精神世界ではなく、対象者となった人物の願望を反映した「その者にとってもっとも都合のいい世界」に閉じ込める点が特徴です。争いの絶えない世界に絶望した「うちはオビト」や「うちはマダラ」は、この術によって絶対的な平和を実現しようとしていました。

●精神攻撃は共感を得られないインテリの証

 こうして精神攻撃を使いこなすライバルやその動機を振り返ると、彼らが単に「ズル」をして勝とうとしているのではなく、自らを鍛え抜き考え抜いた末にたどり着いたのが「心」の領域だったように思えます。

 ライバルたちが強力な戦闘力を持つにも関わらず精神操作を使うのは、単純な力の優劣だけでは、本当に相手に負けを認めさせることや改心させることはできないと気付いたからではないでしょうか。

 彼らは勝負を通じて仲間を獲得し、影響力を増していく主人公の影なのです。

(レトロ@長谷部 耕平)

【画像】えっ、もはや別人… これが藍染惣右介の姿です

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