「人選ぶ衝撃作」「1人で観ないと気まずい」 年齢制限当たり前の衝撃「実写化」映画
恋愛マンガや残酷描写が多いホラーやバイオレンス系のマンガは、過激な内容ながら多くの人を惹きつける題材でもあります。愛の営みや極限状態の人間を描くにあたり、ときには人を選ぶようなシーンも必要になるでしょう。そのような原作を規制に怯むことなく映像化してみせた、「R指定の実写化映画」もありました。
生々しい濡れ場に目が離せない!
毎年、マンガを原作とした実写化映画が数多く生み出されており、なかにはその表現の過激さで年齢制限が設けられることもあります。たとえば2024年7月5日(金)に公開される映画『先生の白い嘘』は、刺激の強い性愛描写や性暴力描写などの含まれることが予告されており、レイティングは「R15+」に区分されています。
これまでもいくつか映像倫理機構(映倫)から、さまざまな理由で規制が入った実写化作品がありました。
●『ドクムシ』
2016年公開の『ドクムシ』は、「刺激の強い殺傷・流血の描写が見られる」という理由から「R15+」に区分された映画です。原作となった合田蛍冬先生の同題マンガは、八頭道尾先生のネット小説をもとに作られた作品で、電子コミック版は350万ダウンロードを超えるヒットを記録しました。
同作は毒虫を使った呪術「蠱毒」がひとつのテーマとなっており、見ず知らずの男女7人が謎の建物に監禁されるところから物語が始まります。建物のなかには食料になりそうなものが何もなく、用意されているものといえば大きな寸胴鍋と肉切り包丁のみです。まるで殺し合いや食人を促すかのようなシチュエーションで、空腹とストレスによって極限状態に陥った7人が仲間割れを起こすのに、そう時間はかかりませんでした。
ついには命を落とす者まで出てしまい、その犠牲者の肉で空腹を満たそうと、肉切り包丁と鍋を使って調理する人まで現れます。当然ながら流血表現が連発されるうえに、腹から内臓が飛び出る描写まであるので、耐性のない人には少々きついかもしれません。
ネット上のレビューでも、「R15なだけあって血もドバドバ出るし思いのほかグロかった」「かなりのグロ耐性が要求される映画」といった声が出ています。なお映画版は小説、コミックそれぞれとは異なる結末を迎えており、テーマはそのままに、登場人物の背景や物語の真相が大きく改変されました。原作を知っている人でも、新鮮な気持ちでストーリーが楽しめるので、ぜひ見比べてみてください。
●『チワワちゃん』
刺激の強い性愛描写を理由として「R15+」に区分された作品が、2019年公開の映画『チワワちゃん』です。同作は『ヘルタースケルター』や『リバーズ・エッジ』などで知られる岡崎京子先生の同題マンガを原作としており、かわいらしいタイトルとは裏腹に、サスペンスをはらむヒューマンドラマが展開されていきます。
タイトルにある「チワワちゃん」とは、物語のキーマンである千脇良子(演:吉田志織)の愛称です。チワワちゃんはいわゆる「パリピ」なグループのマスコットキャラで、性的な関係を含む、友人たちそれぞれとの濃い付き合いがありました。
ですが誰も彼女の素性はおろか、本名すら知りません。そのチワワちゃんがある日バラバラ遺体となって発見されるところから物語が動き出し、浅いようで深くつながっていた友人たちの目を通して、チワワちゃんの等身大の人生が語られていくのです。
なかでも友人のひとり、ハラダ(演:篠原悠伸)が語るチワワちゃんとの日々はひときわ濃厚でした。毎日のように交わるふたりの姿が走馬灯のように展開されるだけでなく、一夜ごとに交わる人数は増え、最終的に5人で激しく乱れる様子が映し出されます。
ただ同作は全体を通して、映像の見せ方がかなりおしゃれで、乱交シーンでさえ洒落たミュージックビデオを見ているかのような映像美が楽しめます。「映画というより長編のミュージックビデオ」「ストーリーのテンポがスタイリッシュかつ独創的でかなりクセになる」「監督の編集センスすごすぎ」と公開当時からSNSで好評を呼び、チワワちゃんの死を通して描かれるそれぞれのキャラクターの「青春の終わり」の切なさも評価されていました。
●『ストロベリーショートケイクス』
魚喃キリコ先生のマンガ『strawberry shortcakes』は、『三月のライオン』などでしられる矢崎仁司監督の手によって実写映画化されています。原作者である魚喃先生が、岩瀬塔子の芸名で出演したことでも話題になりました。
物語は仕事も性格も違う女性4人の群像劇で、大失恋したフリーター、過去の恋にすがるデリヘル嬢、過食症のイラストレーター、結婚願望の強いOLの日常がリアルかつ繊細に映し出されます。都会でアイデンティティを模索する彼女たちに、共感を覚えた人も少なくないのではないでしょうか。
こちらも過激な性愛描写が多く、特にデリヘル嬢の秋代(演:中村優子)と、菊池(演:安藤政信)の濡れ場は、より丁寧かつ濃密に描かれていました。恋人がいる菊池に、「一回だけ」と酒の勢いで事に及んだ秋代の、片思いの行く末には目が離せません。
またOLのちひろ(演:中越典子)と交際する永井(演:加瀬亮)も、見どころのひとつです。彼はいわゆる罪深き「クズ男」なのですが、その性にだらしない雰囲気や蔑んだような眼差しなどがネット上で好評を博しています。メインキャラクターではないものの、菊池を演じる安藤さんとともに抜群の存在感を放っているので、味のあるふたりの姿を見たいという人は一見の価値があるかもしれません。
(ハララ書房)