『機動戦士ガンダム』MSだけじゃなく「ヘルメット」も画期的だった? 富野監督も配慮し続けたデザインの秀逸さ
SFアニメやロボットアニメの主人公たちは、「ヘルメット」をよく着用します。このヘルメットは、アニメの制作上、素肌とバイザー部分とで顔の色の塗り分けが発生するなど、実はやっかいな要素でもあります。しかし、富野由悠季監督はとある工夫をすることで、時間と費用の節約を行いました。
アニメ制作で「ヘルメット」はやっかいな存在?
自転車に乗るときにも被るのが当たり前になりつつある「ヘルメット」は、私たちの生活には、もはや日用品といえるかもしれません。
ところが、かつて、特にTVアニメーションでロボットものが盛んに作られていた1970年代後半から90年代あたりまで、ヘルメットというものは、たとえば軍隊や工事現場、もしくはバイクのライダーやF1レーサーなど、特に子供たちにとっては少し特別なところにいる人たちの「カッコいいアイテム」という認識が一般的でした。
日本のTVアニメに限ったことでいえば、もっと昔のモノクロTV時代のヒーローたちも多くはヘルメットを被っています。
しかし白黒放送なので、ヘルメットについているバイザーフード部分はたいてい黒で、これを目の上まで降ろしてしまうと、鼻と口しか見えなくなってしまい表情は口元のみになります。目元が隠れるのは、それはそれでカッコイイですし、当時のTVアニメクオリティでは問題になりませんでした。
ところがカラーTVになり、クオリティが上がるにしたがって変わっていきます。
特筆すべきは1972年から放送がスタートした『科学忍者隊ガッチャマン』です。
この作品で、主人公たちが被っているヘルメットのバイザー部分はメンバーによって色が違ううえ、普段から顔のかなりの面積を覆い、奥が透けて見えます。このバイザー部分を「エアブラシ」という、絵の具を霧状にして吹き付ける方法を使って表現しているのです(全部のカットではありません)。
詳しい説明は省きますが、この方法は大変手間と時間がかかり、今でも業界では語り草になるほど。よほど潤沢な制作期間と資金があったのではと邪推する人もいるほどです(真実のほどは私は知りません)。
一方、それに遅れて1973年、『0(ゼロ)テスター』というTVシリーズからSF路線に参入したサンライズ(当時は、創映社とサンライズスタジオという別会社)は、バイザーがかかった部分は、色の付いたグラス越しに見える色という考え方で、通常の肌の色とは違う色でその部分を塗り分ける方法をとりました(他の制作会社でも行われています)。
この方式は、後に続くさまざまなTVシリーズに引き継がれていきますが、バイザーが鼻のところまでしか降りないデザインの場合、鼻から下は通常の肌色、バイザー部分はグラス越し色、という手間がかかってしまいます。