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『Zガンダム』で初登場の「強化人間」はなぜいつまで経っても普及しないのか

『Zガンダム』より登場する「強化人間」は、人間を人為的に強化してニュータイプに匹敵する能力を持たせたというものですが、66年後の『Vガンダム』でも問題がある技術だったようです。なぜ強化人間は上手くいかないのでしょうか。

人間には自由意志があるので……

「強化人間」といえば。「GGG 機動戦士Zガンダム フォウ・ムラサメ」(メガハウス) (C)創通・サンライズ
「強化人間」といえば。「GGG 機動戦士Zガンダム フォウ・ムラサメ」(メガハウス) (C)創通・サンライズ

「機動戦士ガンダム」シリーズの「強化人間」は、アニメとしては『機動戦士Zガンダム』に登場した女性パイロット「ロザミア・バダム」が初登場になります。マンガ『機動戦士ガンダムMSV-R ジョニー・ライデンの帰還』(著:Ark Performance/メカニックデザイン:大河原邦男/原作:富野由悠季/原案:矢立肇)では、一年戦争期に、すでにジオン軍によって強化人間「イングリッド0」や「ユーマ・ライトニング」を実戦投入していた描写があり(ただし、身体能力強化を中心としたもので『Z』以降のものとはやや異なる)、人間を人為的に強化するという構想が、シリーズ最初の年代からあったことがわかります。

 考えてみれば、宇宙世紀は「人類が革新した存在」である、ニュータイプに進化していくという思想が強くある時代ですから、「優れた人間」への希求心が強いのでしょう。また、平時であってもスペースコロニー建設など、過酷な宇宙環境で人間が生存するために、身体能力や判断能力の向上にニーズがあったと想像できます。

 一方で「ジオン・ズム・ダイクン」の説く「人類がニュータイプへ進化する」という思想自体が、「そのように見なされる実例」のひとつもなく大衆を扇動できたとは思えません。「人類が宇宙に出て、判断力が異常に向上した」事例はあったのでしょう。

 さて、一年戦争で「アムロ」「シャア」「ララァ」などが「ニュータイプの脅威」を見せつけたこともあり、連邦でもオーガスタ研究所などで強化人間を作り出します。

 冒頭で挙げたロザミアや、『Z』のヒロインのひとり「フォウ・ムラサメ」は、その強化人間です。どちらも「人為的に強いトラウマの記憶を与えたり、薬物を投与したりすることで、ニュータイプ独特の精神感応波を発するようになった兵士」であり、情緒不安定で、命令にも不服従になりがちでした。いずれも人間の性質としてはさして珍しくないものの、兵器としては未完成といえます。続編『機動戦士ガンダムZZ』の強化人間も同じような描写でした。

 宇宙世紀0093年を舞台に描く映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の「ギュネイ・ガス」もやや情緒不安定ながら、この辺りから「精神的に不安定ではない強化人間」が登場します。宇宙世紀0096年が舞台の『機動戦士ガンダムUC』にてネオ・ジオン残党(袖付き)を率いた「フル・フロンタル」は「ジオンの強い指導者であるシャア」の役割を理解して、ある意味、本物のシャアよりも高い情勢判断能力や精神安定を示していました。

 宇宙世紀0123年を描く『機動戦士ガンダムF91』のラスボス「鉄仮面」こと「カロッゾ・ロナ」も、知性的判断と情緒の安定性のある強化人間として描かれていました。カロッゾは宇宙空間を生身で活動し、MSのコックピットハッチを素手でこじ開けるなど、身体能力も常人を遥かに越えていました。

 つまり「人を強化する技術」はこの辺りである程度、完成したようにも思える一方、宇宙世紀0153年を舞台とする『機動戦士Vガンダム』小説版(著:富野由悠季/KADOKAWA)では、強化人間の「カテジナ・ルース」や「ファラ・グリフォン」は、極めて情緒不安定な人間として描かれていました。カテジナの描写を考えると「元々情緒不安定な人間は、強化しても情緒不安定」なのかもしれません。

【画像】こちらが戦闘シーンはもちろんお風呂シーンで広く知られる「強化人間」です

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