『Gガン』東方不敗マスター・アジア登場30年 何かがおかしい? …何もかもおかしい!
その最期が『Gガンダム』真の最終回といわれるワケ

マスター・アジアの登場による大きな影響は、これだけではありません。もっとも影響を受けたのは主人公「ドモン・カッシュ」というキャラクターでした。マスター・アジアとの戦いによってドモンは成長し、キャラクターとしての魅力を引き出されていったのです。
第12話までのドモンを見ると、不愛想で挑発的な態度だけが目立つキャラクターでした。唯一、違って見えたのが第6話での家族とのやり取りの中だけで、ここに至るまでにドモンというキャラクターの魅力は今ひとつ引き出せていなかったといえるでしょう。
それが大恩ある師匠のマスター・アジアと出会うことで、さまざまな顔を見せるようになりました。悲しみや迷いといった、それまでのドモンが見せなかった表情を、心を許せるマスター・アジアに見せることで、キャラクターに厚みがもたらせられたというわけです。
そのマスター・アジアが敵としてドモンの前に立ちふさがることで、『Gガンダム』の物語はより大きく動き出します。さらにいえば、師匠であるマスター・アジアを超えることがドモンの成長の証であり、『Gガンダム』の大きな軸になったといえるでしょう。そういった点では、マスター・アジアは『Gガンダム』の影の主人公といえるかもしれません。
もちろん理屈抜きに、マスター・アジアというキャラクターが魅力的に描かれていたことで、ファンから高い支持を得ていたということだと思います。その行動はもちろんのこと、数々の名言は今でも脳裏に焼き付いている人も多いことでしょう。さらに初期の、目的の見えないマスター・アジアの謎めいた行動から、徐々に真意が明かされていくという展開は、当時のファンにとって最大の関心事でした。
その最期を描いた第45話「さらば師匠! マスター・アジア、暁に死す」で、絵コンテを共同で担当した今川泰宏監督が、最終回まで数話あるのに思わず「完」と書いてしまったという、ファンには有名なエピソードがあります。それだけマスター・アジアが『Gガンダム』という作品にとって大きな存在だったといえるかもしれません。
その人気から、一定の層ではいまだに「師匠」といえばマスター・アジアのことと認識されます。そして熱烈なファンは、いまだにドモンとの掛け合いが口をついて出てくることでしょう。もちろん筆者もいまだに言えます。ではみなさんもご一緒に。
流派東方不敗は
王者の風よ
全新系列 天破侠乱
見よ! 東方は赤く燃えている!
(加々美利治)




