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『ガンダム』アムロの名前「嶺」の姓が広く知られる最大の理由 実はガンプラにあり?

『機動戦士ガンダム』の主人公アムロ・レイは日系人という説があります。その裏付けとして「アムロ・嶺」という当て字がありました。どこから出てきたものなのでしょうか。

ガンプラの説明文に謎の表記が……?

「嶺」なる当て字が広まったきっかけはこのガンプラの箱か。「1/144 ガンダム」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ
「嶺」なる当て字が広まったきっかけはこのガンプラの箱か。「1/144 ガンダム」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

『機動戦士ガンダム』の主人公である「アムロ・レイ」は、山陰出身の日系人なのではないか、という説がありました。この説については、マグミクスの記事「これが真相か『アムロは鳥取出身』説 元サンライズの中の人に聞いてわかったこと」にて、『ガンダム』制作当時にサンライズ(現 バンダイナムコフィルムワークス)に在籍していた風間洋(河原よしえ)さんが「そのような設定はないはず」と否定しています。

 アムロが「山陰出身の日系人」説の、根拠のひとつになっていたのが「アムロ・嶺」という姓名表記です。しかしながら2024年現在、公式では使われていません。なぜ、このような表記が広まったのでしょうか。

「アムロ・嶺」という表記がもっとも多くの人の目に触れたのは、大流行した「ガンプラ」でしょう。『ガンダム』放送終了後の1980年7月に発売された最初のガンプラ「1/144 ガンダム」のパッケージ側面に記載されたアムロの説明は、次のようなものでした。

「正式名称はRX-78モビルスーツで愛称がガンダム。これを操縦するのが電子工学に強い少年アムロ・嶺である……」

『ガンダム』の放送で「アムロ・レイ」という表記に慣れていたファンは、この表記に戸惑いました(「ガンダム」って愛称だっけ? という戸惑いもありましたが)。やがて爆発的なガンプラブームが起こり、「1/144 ガンダム」のキットも改良されていきます。同時に説明文もリニューアルされ、1981年2月に生産された分から「アムロ・嶺」の表記が削除されたことが確認されています。

 さかのぼると、『ガンダム』放送当時に発売された関連書籍やムックなどにも「アムロ・嶺」と記されているケースがありました。

「アムロ・嶺」という表記は、富野喜幸(現・由悠季)監督が1979年1月に作成した「機動戦士ガンダム 設定書」に登場します。この設定書は『機動戦士ガンダム記録全集』などで閲覧することが可能です。1979年4月放送開始ということもあり、「15才男、主人公です」「女性コンプレックスを持ち、孤独癖があり、コンピューター・マニア」など、ほとんど完成形に近いものになっています。逆にいえば、放送直前まで「アムロ・嶺」という表記が残っていたことになります。

 さらにさかのぼると、脚本家の星山博之さんが1978年夏頃にまとめた企画書「フリーダムファイター ガンボーイ」の主人公は、「本郷東」という日本人の少年になっていました。当時は「ロボットアニメの主人公は日本人」というのが鉄則だったからです。

 ここから富野監督がさらに手を加えます。1978年11月にまとめられた「機動鋼人ガンボイ」企画書には、主人公の名前が「アムロ・峰(れい)」と表記されています。「峰」は「嶺」と同じく「みね」と読み、意味合いも同じですが、「峰」は常用漢字です。「アムロ・峰」については、日本人と白人の両親を持ち、「正義感が強く、繊細な感性の持ち主」と記されていました。この企画書は『機動戦士ガンダム』Blu-rayメモリアルボックスの封入特典になっています。

 なお、放送当時のスポンサーである玩具会社のクローバーが『ガンダム』放映直前に配布していた玩具店向けの宣材では、「アムロ峰を中心に26人の少年達によって展開されるスペクタクル超大作!!」と説明されていました。これは「ガンボイ」の企画書を元に作成されたものだと推測されます。

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