『サイボーグ009』最終回はどうなった? 「マンガ史上最高」と「賛否分かれる」2つのエピソード
石ノ森章太郎氏のSFマンガ『サイボーグ009』は、2024年7月で生誕60年を迎えます。世界平和のために戦い続ける「009」たちサイボーグ戦士の物語は、幅広い世代に読み継がれてきました。「マンガ史上最高の最終回」とも評される『サイボーグ009』の人気エピソード「地下帝国ヨミ編」の最終話と、今なお賛否を呼ぶ「天使編」を振り返ります。
生誕60年を迎えた『サイボーグ009』

7月7日は七夕です。織姫(ベガ)や彦星(アルタイ)が輝く、夏の夜空を眺める人も多いのではないでしょうか。星空といえば、マンガ史に残る名エピソードを残した石ノ森章太郎氏の人気コミック『サイボーグ009』も思い出されます。
個性豊かな9人のサイボーグ戦士たちの活躍を描いたSFマンガ『サイボーグ009』は、1964年7月から「週刊少年キング」(少年画報社)で連載が始まり、2024年で誕生から60年となります。集団ヒーローものの先駆作であり、とりわけ1966年から「週刊少年マガジン」(講談社)で連載された「地下帝国ヨミ編」の最終話「地上より永遠に」は、屈指の最終回として知られています。
石ノ森氏のライフワークとなった『サイボーグ009』とその最終回について、考察します。
首領の正体が明かされた「地下帝国ヨミ編」最終話
漫画家としての新人時代を「トキワ荘」の仲間たちと過ごした石ノ森氏が、「トキワ荘」を出て、プロ意識を持って挑んだ最初の連載が『サイボーグ009』でした。連載がスタートした1964年はベトナム戦争が始まり、「地下帝国ヨミ編」を執筆した1966年から1967年はベトナム戦争がますます激化した時代でした。
009こと島村ジョーたちが戦う相手は、武器商人たちの秘密組織「ブラック・ゴースト」です。実はジョーたちも、「ブラック・ゴースト」によって改造手術を受けた「人間兵器」でした。しかし、ジョーと8人の仲間たちは「ブラック・ゴースト」に利用されることを嫌い、生みの親であるギルモア博士と一緒に逃げ出したのです。
各国でそれぞれ平穏な生活を送っていた9人のサイボーグ戦士たちは、「ブラック・ゴースト」を倒すために再集結します。地底から来た美女ヘレンに導かれ、「ブラック・ゴースト」の基地がある地下帝国を目指すことに。地下帝国の旧支配者だった食肉トカゲ「ザッタン」、ロボット兵を操る「ブラック・ゴースト」、009たちの三つ巴(どもえ)の戦いとなります。
敵味方が入り乱れての攻防の末、「ブラック・ゴースト」の首領がいる魔神像に009たちは肉薄します。成層圏への脱出を図る魔神像を追い、001の超能力によって009のみが魔神像内に瞬間移動するのでした。首領の意外な正体を知った009は、「黒い幽霊(ブラック・ゴースト)は、人間の心から生まれたもの。地球上のすべての人間を殺さないと、黒い幽霊も死なない」というシビアな言葉を首領から浴びせられます。
魔神像は009によって破壊されますが、そこはすでに大気圏外でした。爆発した魔神像から投げ出された009のもとに、飛行能力のある002ことジェットが飛んできます。しかし、ジェットもすでにエネルギーを使い果たしており、ふたりは抱き合うようにして地球の引力に引き寄せられていくのでした。
このときのジェットの言葉「ジョー! きみはどこにおちたい?」はマンガ史に残る名言となっています。