『ワンピ』尾田先生も「死んだほうが…」 極悪非道なのに好かれがちなクズ
作中での立ち振る舞いはクズだけど、なんだか嫌いになれない……。そんな不思議な魅力を持つキャラクターは、意外と多いものです。『ONE PIECE(ワンピース)』にも、さまざまなタイプの「嫌いになれないクズキャラ」が登場してきました。
作中で一番クズなのは?

さまざまなキャラクターが登場する『ONE PIECE(ワンピース)』には、作中での立ち回りが極悪非道すぎる「クズキャラ」も数多く登場します。そういったキャラクターたちは総じて読者から嫌われていそうなイメージがありますが、なかには「嫌いになれないクズキャラ」も少なからずいるようです。
例えば「パンクハザード編」に登場する「シーザー・クラウン」は、その典型といえるのではないでしょうか。彼は大量殺戮兵器製造の第一人者にして、非人道的研究を繰り返すマッドサイエンティストです。誘拐してきた子供たちをクスリ漬けにしたり、「シノクニ」というガス兵器を売るために被害の状況を世界へ生中継したり……と、まさに悪逆非道のかぎりを尽くします。かつて緑豊かだったパンクハザード島を生物の住めない島にしたのもシーザーでした。
作者である尾田栄一郎先生でさえ、「死んだほうがいい」と単行本のSBSコーナーで語っていたほどで、やったことだけ見ると絶対に許されない悪役です。しかし「麦わらの一味」に捕まってからは、ネタキャラのようなイジリを受ける場面が増え、かわいげが出てくるようになりました。読者からも「サニー号に乗って以降、だんだん憎めなくなってくる」「良いように利用されているところとかホントかわいい」といった声が聞かれます
ほかにもシーザーに負けず劣らずのクズっぷりで知られているのが、現「CP-AIGIS 0(CP0)」の長官である「スパンダム」です。かつては「CP9」の司令長官に君臨していた人物で、「エニエス・ロビー編」におけるヴィランとして「麦わらの一味」の前に立ちはだかりました。
スパンダムがクズと呼ばれる所以は挙げるとキリがありませんが、特にニコ・ロビンに対する言動が悪印象を残しています。無抵抗な彼女に対して暴言を浴びせたり、血が出るまで暴力を振るったりしていたため、終盤で成敗されたシーンは多くの読者をスカッとさせたことでしょう。
その一方でスパンダムは、思い返すとドジっ子(?)的なキャラクターでもありました。電話しながらコーヒーをこぼすのは序の口で、「CP9」を叱責するために間違ってバスターコール発令用のゴールデン電伝虫を使い、それを島中に伝えてしまうという、うっかりでは済まされないミスを犯しています。
一連の行動は良くも悪くも強烈なインパクトを与え、ギャップで愛おしさを感じた人も少なくないようです。2021年に開催された「第1回ONE PIECEキャラクター世界人気投票『WT100』」で、総勢1174キャラクターのうち163位と意外な高順位となっていたことも、その証明になるでしょう。
一方でシーザーやスパンダムとは違った意味で人気を得ているのが、「ドンキホーテ・ドフラミンゴ」です。元王下七武海のひとりであり、闇のブローカー「JOKER」として新世界で人工悪魔の実「SMILE」を密売していた人物でもあります。
「SMILE」は「ワノ国編」の「胸糞エピソード」を生み出した諸悪の根源であり、それを私利私欲のために流通させたドフラミンゴは、『ONE PIECE』でも指折りのクズといっても過言ではありません。
それでも「家族」に対して熱い情を見せる部分や、悪のカリスマ的な側面、さらには「勝者だけが正義だ」などのカッコいい名言を残す「名言製造機」的な一面から、彼を嫌いになれない読者も多いようです。現在は「インペルダウン」に幽閉されている身ですが、果たして再登場はあるのでしょうか。
筆舌に尽くしがたいクズだとしても、不思議と愛着が湧いてしまうのは尾田栄一郎先生の力量があってこそでしょう。その秀逸なキャラ設計には、感心させられるばかりです。
(ハララ書房)