なぜ『ガッチャマン』は国民的ヒーローアニメになった? 人気の理由を読み解く
懐かしアニメの定番『科学忍者隊ガッチャマン』は、全105話もの超ロングラン作品でした。人気の理由は「怪獣もの」と「戦隊もの」、そして『ガンダム』に先がけた要素を持っていたから、といえるでしょう。
超ロングランになったのは画期的だったから……じゃない?

日本のテレビアニメ黎明期から業界を牽引し、数多くのオリジナル作品を次々と送り出してきたタツノコプロ、その代表作のひとつである『科学忍者隊ガッチャマン』は、今年で放送終了から50周年目を迎えました。最近でも大手企業とのCMがあり、時計などコラボ製品も発売されており、人気は衰えを見せていません。
これほどに定着しているのは、元々のテレビシリーズが幅広い支持を勝ち得ていたためです。1972年10月から1974年9月まで約2年ものロングランで平均視聴率は17.9%、最高視聴率は26.5%を記録しています。押しも押されもせぬ、超のつく人気番組だったわけです。
なぜ2年もの間、安定した人気がキープできたのでしょうか。すべてが画期的だったから……というわけではないでしょう。あまりに新しすぎるものは、視聴者の理解が追い付かず、リアルタイムの評価も恵まれずじまいで「早すぎた名作」と言われがちです。
今の目で振り返ると、本作は「すでに人気のあるアニメや特撮のいいところ取り」をし、「少し時代を先取り」した作品でした。前者については、一つひとつ磨きあげて最高の状態にまで持っていく、後者はまだ荒削りな要素ながらも、視聴者には未来を見せ、後世の作品に進化の種を残した、といったところです。
「怪獣モノ」と「変身ヒーロー」の欲張りセット
まず、本作は「怪獣モノ」でした。雨降りしきるなか、重量感ある巨体がのし歩き、レーザー光線が貯蔵庫を蹂躙、あたり一面火の海になり、赤く染め上げられる鉄の巨獣……第1話を華々しく飾った敵メカ「タートルキング」は、怪獣映画のセオリーに則った威圧感と暴れっぷりでした。
本作が始まる前年の1971年は、第二次怪獣ブームが巻き起こった年にあたります。一度は下火になった怪獣人気は、旧作の再放送や着ぐるみを再利用した『ウルトラファイト』のヒットからソフビ人形の売れ行き増につながり、やがて『宇宙猿人ゴリ』(後の『スペクトルマン』)や『帰ってきたウルトラマン』が放送を開始しました。さらに『仮面ライダー』も始まったことで、変身ヒーローブームとも呼ばれています。
そのようななか、本作は毎回のように「鉄獣メカ」という名のロボット怪獣が世界を混乱に陥れ、ときには地球を滅亡させかねない大惨事を招きました。特撮であれば大がかりなセットを用意する必要がありますが、アニメであれば「絵」さえ用意すればスケールはいくらでも大きくできる強みがあります。各話のサブタイトルにも何度か「怪獣」が入っており、そちらに寄せるのは意図的だったのでしょう。
しかも、本作は「変身ヒーロー」でもあります。「大鷲の健」が変身するついでに愛機の小型飛行機まで変形(原形を留めていないので変態?)するのはやり過ぎの感も……「第2次怪獣ブーム」と合わせた欲張りセットだったのです。