『宇宙刑事シャイダー』感動で震えたラスト 主演・円谷浩さんの早すぎた旅立ち
渡辺宙明氏が歌う挿入歌「不思議ソング」
また、『シャイダー』で印象深いのが、挿入歌の「不思議ソング」です。作曲を担当した渡辺宙明氏によると、澤井(信一郎)監督から「ブキミではなくフシギな曲を作ってほしい」と依頼され作曲をしたのはいいものの、1話で使うには撮影に間に合わないので、渡辺氏自身が簡便なシンセサイザーを使って曲を作り、歌を入れたデモテープを提出したのだそうです。本来であればこれを元にコーラスユニット「こおろぎ’73」に歌ってもらい、それを番組に使うはずが、澤井監督をはじめとする現場からは「渡辺氏のバージョンを使いたい」という声が出て、渡辺氏は録り直しを申し出たものの、澤井監督は「いや、これがいい、これが使いたいんだ!」と押し切ったのだそうです。
今改めて聴いてみると、確かに不思議な時空に心を持っていかれそうな怪しげな魅力に満ちている曲で、『ギャバン』や『シャリバン』のシリアス路線とは異なる作品であることを、はっきりと子供たちに伝えるための大きな力となったのではないかと思えます。当時の渡辺氏は「歌の練習をしておけばよかった……」と、少々後悔していたそうですが、2000年に発売された『宇宙刑事大全 ギャバン・シャリバン・シャイダーの世界』(双葉社)に掲載されたインタビューでは「自分ではとても気に入っている曲のひとつです」と明言されています。
そうして1年の放送期間が終了を迎えようとしたとき、「宇宙刑事シリーズ」最大と言ってもいい見せ場が訪れます。ギャバン・シャリバン・シャイダーの三者連続変身です。
「蒸着!」「赤射!」「焼結!」
と、3人の勇者たちが続けざまに変身していく姿は、今見ても身震いがするほど感動的であるとともに、3年間にわたる「宇宙刑事シリーズ」に終わりを告げる最高のセレモニーとなりました。
TVでの「宇宙刑事シリーズ」はこれで終了となりましたが、2012年公開の『宇宙刑事ギャバン THE MOVIE』をはじめとして、映画やVシネマなどで、宇宙刑事たちは代替わりを経ながらも戦い続けています。もちろんギャバン役の大葉健二氏やシャリバン役の渡洋史氏はまだまだ健在です。これからも宇宙刑事たちは、新しい姿と変わらぬ姿、両方を見せてくれることでしょう。
※参考文献:『宇宙刑事大全 ギャバン・シャリバン・シャイダーの世界』(双葉社)
(早川清一朗)