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『ウルトラマン』バルタン星人は優遇され過ぎ? 最多出演のほか「幻の企画」も

『ウルトラマン』をよく知らない人でも見覚えがあるだろう怪獣が「バルタン星人」です。どうしてバルタン星人は知名度を上げたのでしょうか。その人気の秘密を紐解いてみましょう。

バルタン星人が子供たちに愛されるようになったワケ

 ウルトラマンとバルタン星人のアクションフィギュア「S.H.Figuarts ウルトラマン」「S.H.Figuarts バルタン星人」 (C)円谷プロ (C)BANDAI
ウルトラマンとバルタン星人のアクションフィギュア「S.H.Figuarts ウルトラマン」「S.H.Figuarts バルタン星人」 (C)円谷プロ (C)BANDAI

 今も昔も「ウルトラマン」のライバルといって思い出す怪獣といえば、「バルタン星人」と答える人が一番多いのではないでしょうか。それほどみんなから愛されているウルトラ怪獣です。その魅力について紐解いていきましょう。

 バルタン星人は、1966年7月24日放送の『ウルトラマン』第2話「侵略者を撃て」で初めて登場しました。今年(2024年)で初登場から58年となります。セミを思わせる顔と特徴的な大きなハサミ、怪奇性だけでなく愛せるユーモラスな部分が共存する稀有なデザインといえるでしょう。

 このバルタン星人をデザインしたのが成田亨さん。ウルトラマンをはじめ、第1期ウルトラシリーズの怪獣たちのほとんどをデザインした人です。このバルタン星人のデザインは、『ウルトラQ』第16話「ガラモンの逆襲」に登場した「セミ人間」に、「ツノとハサミをつける」よう注文されました。

 そのため、着ぐるみ自体もセミ人間の改造といわれています。ところが近年、造形担当者から「改造ではない」という証言もあり、現在では真相が明らかになっていません。もっともバルタン星人のデザインが、セミ人間をベースにしたことは前述したように確かです。

 バルタン星人最大のチャームポイントといえば、やはりこのハサミでしょうか。『ウルトラマン』を観て育った人であれば、子供時代に両手をチョキにして上下に振り「フォッフォフォ…」と笑うバルタン星人のマネをした経験があると思います。この簡単にマネができるポイントがある点が、バルタン星人の人気の秘密でしょう。

 ちなみにこの独特のポーズには、とある「大人の事情」が隠されていました。バルタン星人の生みの親ともいえる第2話の脚本と監督を務めた飯島敏宏さんによると、「腕を下げるとハサミが重いから大変。そこで腕を上げて立てると楽だった」とのことです。

 さらにバルタン星人といえば、この特徴的な笑い声も印象的でしょうか。その元祖は東宝映画『マタンゴ』に登場するキノコ人間「マタンゴ」がベースです。この声は『ウルトラQ』に登場する「ケムール人」や「悪魔ッ子リリー」にも流用されていました。

 もともと怪奇的なイメージが強かったバルタン星人は、TVに先駆けてマンガ雑誌「週刊少年マガジン」で連載されていたコミカライズ版では、映像以上に不気味な存在として描かれていました。

 このコミカライズ版では人間の肉体に寄生するゾンビのようなバルタン星人の姿が描かれています。当時はまだ特撮ヒーロー作品が黎明期で、妖怪的なホラー要素が先行したからなのでしょう。このコミカライズ版を担当した漫画家が、ホラーマンガの第一人者である楳図かずお先生だったことも大きな要因でした。

 思えば初登場回の演出も怪奇要素が強く、命の意味も知らない人間とのコミュニケーションも希薄な怪物として描かれています。このバルタン星人が愛される存在となったのは、やはりその後の活躍があったからではないでしょうか。

【画像】怖いよ! こちらが楳図かずお版「バルタン星人」です(3枚)

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