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東映の危機を救った『宇宙刑事ギャバン』 教えてくれた「あきらめないことさ!」

東映ヒーローを救った『宇宙刑事ギャバン』

『太陽戦隊サンバルカン』DVD VOL.1 (東映ビデオ)
『太陽戦隊サンバルカン』DVD VOL.1 (東映ビデオ)

 実は『ギャバン』が放送された時期、東映のヒーロー番組は危機に瀕していました。最盛期には8作品が放送されていましたが、『仮面ライダー』シリーズが1981年の『スーパー1』で終了し、残るは『太陽戦隊サンバルカン』『大戦隊ゴーグルファイブ』といった、スーパー戦隊シリーズ1本のみとなってしまっていたのです。

 この危機を救うため立ち上げられた企画のなかで、形になった数少ない作品のひとつが『ギャバン』なのです。この時、東映とTV局、スポンサーの共通認識となっていたのが「仮面ライダーとは異なる単体ヒーローの創造」でした。

 ここで大きな力を発揮したのが、ビジュアルイメージを担当していたバンダイの村上克司氏。超合金シリーズの第1号である『超合金マジンガーZ』の発案者です。要望を受けて村上氏が起こした“剣を持っている銀色のメカニカルなヒーロー“のデザインが、ギャバンの原型となりました。

 しかし問題はそこからでした。銀色に輝くメタリックスーツは完成したものの、反射した日光がカメラに入ってしまい、野外での撮影は難しいことが分かったのです。そこで脚本家の故・上原正三氏がひねり出したのが、魔空空間でした。

「魔空空間にひきずりこめ!」の声と共にギャバンが引きずり込まれた異様な空間は、実はメタルスーツに光が反射しないように調整された撮影場所だったのです。

 また、『ギャバン』の変身シーンはポーズを取った次の瞬間に変身が完了しますが、従来のヒーローでは「なんで変身中に敵は攻撃してこないのか」とツッコミが入るところを、「実は変身プロセスは0.05秒で人には見えない」設定にして、「では、蒸着プロセスをもう一度見てみよう」とスローで蒸着シーンを再生することにおり、ツッコミを回避しつつ近未来的なイメージを与えることができる、画期的なものでした。

 さまざまな新機軸が盛り込まれた『ギャバン』に感銘を受けたのは、日本の少年だけではありません。映画監督のポール・バーホーベンは『ロボコップ』製作の際に村上氏に『ギャバン』からのデザイン引用許諾を求める手紙を送り、村上氏はこれを快諾しています。

 多くの人が汗を流し、知恵を絞り、熱意をぶつけて作り上げた『ギャバン』は、多くの子供を熱狂させ、メタルヒーローシリーズ誕生の原動力となりました。危機に陥ったとき、最も大事なことは何か、『ギャバン』が教えてくれたのは……。

「あきらめないことさ!」

(早川清一朗)

【画像】平和を守り、東映も救った『ギャバン』(5枚)

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