幻に終わった、4つの『日本沈没』。2020年アニメ化の前に知っておきたい、映画化の歩み
「沈没後」を描く予定だった、東宝の『続・日本沈没』

東宝は『日本沈没』の大ヒットを受けて、翌年に同じ小松左京原作の『エスパイ』(1974年)を公開。『エスパイ』の映画化自体は1966年から企画されており、田中友幸氏が長年温めていたものでした。ちなみに1964年頃、東宝の岡本喜八監督がクレージー・キャッツ主演で同じく小松氏の小説『日本アパッチ族』の映画化を企画していましたが、こちらは実現しませんでした。
そして東宝は『日本沈没』の続篇『続・日本沈没』を企画します。内容は国土を失い世界中に散った日本人たちの動向を描くというものです。小松氏が本来描きたかったテーマは国土を失った日本人の漂流、むしろ「沈没後」であり、『日本沈没』の仮題のひとつに『日本漂流』というものもありました。
しかし、小説『日本沈没』の執筆に9年の歳月を要したように、小松氏による原作小説の執筆は進まず、製作の延期が繰り返された末、『続・日本沈没』の映画化は立ち消えとなってしまいます。
また東宝は同じく小松氏の『復活の日』の映像化も企画していました。しかし脚本を依頼された関沢新一氏が、予算内には到底収まりきれない規模の内容だとして依頼を断ってしまいます。後に角川映画によって、南極をはじめとした海外ロケを敢行し、国内外のスターが共演する大作として『復活の日』(1980年)は映画化されました。
結局『続・日本沈没』は映画化されませんでしたが、『日本沈没』のヒットや、洋画のパニック映画のブームを受けて、東宝は『ノストラダムスの大予言』(1974年)、『東京湾炎上』(1975年)、『地震列島』(1980年)と、怪獣の登場しない特撮パニック映画大作を連作していくことになります。