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幻に終わった、4つの『日本沈没』。2020年アニメ化の前に知っておきたい、映画化の歩み

実際の災害を契機に再浮上 東宝・松竹、ふたつの『日本沈没』

2006年公開、再映画化された『日本沈没』。草なぎ剛と柴咲コウが主演。
2006年公開、再映画化された『日本沈没』。草なぎ剛と柴咲コウが主演。

『日本沈没』の再映画化が浮上するのが1990年代の中ごろです。1995年に発生した阪神・淡路大震災をきっかけに、東宝と松竹のふたつの映画会社でそれぞれ立案されました。

 東宝が企画した『新日本沈没』は2部構成で、第1部は原作や前作をベースにした内容。第2部は世界に散った日本人を描くというもので、小松氏が構想していた続篇の要素も組み込まれた内容になっていました。また第1部では原発事故による複合災害も描かれる構想だったのです。

 最終的に小松氏は自身が総監督を務めた映画『さよならジュピター』(1984年)など、これまで東宝との仕事が多かったことから、松竹に対して『日本沈没』の再映画化を許諾しました。ちなみに映画化された小松氏の小説5作品の内、東宝以外の会社で映像化された作品は角川映画の『復活の日』、大映の『首都消失』(1987年)の2作品のみです。

 松竹の『日本沈没1999』は、平成ゴジラシリーズを手掛け、阪神・淡路大震災で自身も被災した大森一樹監督を起用し、総製作費12億円の超大作として企画されていました。ミニチュア特撮を得意とする東宝との差別化や、新しい映像表現への挑戦から、CG技術を積極的に導入する構想だったそうです。

 大森監督による準備稿には、東宝の『新日本沈没』と同じく原発事故や、すべての個人情報が納められたIDカード“ジャパン・カード”が海外移住する国民全員へ発行されるという描写が盛り込まれていました。前者は東日本大震災で現実のものとなり、後者は現在施行されているマイナンバー・カードを彷彿させます。

 ポスターも印刷されていた『日本沈没1999』ですが、松竹が製作費を調達できなかったため最終的に製作中止となってしまいました。

 そして2006年に樋口真嗣監督によるリメイク版『日本沈没』(2006年)が公開され、興行収入53億4千万円の大ヒットを記録します。しかし製作したのは松竹ではなく、前作の『日本沈没』を映画化した東宝と、TVドラマ版を製作・放送していたTBSを中心とした製作委員会でした。

 このリメイク版と同時期に小松氏と谷甲州氏との共著という形で、ようやく続篇となる小説『日本沈没 第二部』が刊行。さらにこの流れに便乗する形で、筒井康隆氏のパロディ小説を河崎実監督が映画化した『日本以外全部沈没』(2006年)まで公開されたのです。

 二度の実写映画化や、実現せずに終わってしまった続篇や映画化企画の多さは、『日本沈没』に描かれているテーマやメッセージが古びていないことの証拠でしょう。これまでさまざまなメディア化がされてきた『日本沈没』ですが、アニメーション化は今回が初となります。東日本大震災を経て製作される『日本沈没2020』は、果たしてどのような作品になるのでしょうか。

(森谷秀)

【画像】そもそも『日本沈没』ってどんな話? 原作小説と関連作品(6枚)

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