「勇者」シリーズに大きな影響を与えたロボットアニメとは? 紡がれた「お約束」の系譜
トランスフォーマーと勇者にあった共通点とは?
共通項のひとつ、それは「意志を持ったロボットが乗りものに変形して戦う」という部分です。
有り体にいってしまえば、「スポンサーであるタカラの販売するオモチャをカッコよく見せるアニメ」でしょうか。もっともこれは、ほとんどのロボットアニメに同じことがいえてしまいますけれども。
「商品となるオモチャが乗りものに変形すること」この点を引き継いだことで、「勇者」は「トランスフォーマー」と、ロボットアニメのなかでも同じジャンルとなりました。スポンサーの商品が同系統なのですから、この点は外せない要素だったといえるでしょう。
もうひとつはドラマ部分の設定にあたる個所でした。それが「ロボットと少年の交流」です。意外に思われる人もいるかもしれませんが、この種族を超えた友情、絆といったものが「トランスフォーマー」と「勇者」にあった共通項でした。
シリーズ第1作『トランスフォーマー』では地球人の少年「スパイク」が、宇宙から来た超ロボット生命体「トランスフォーマー」と出会うことで物語が始まります。そして、この異文明の交流が軸となってストーリーが進展しました。
このトランスフォーマーと少年の物語は後のシリーズにも引き継がれ、さまざまなストーリーを紡いでいくことになります。この部分が「勇者」にも引き継がれました。『勇者エクスカイザー』では、地球人の少年「星川コウタ」と、エネルギー生命体で「宇宙警察カイザーズ」の一員「エクスカイザー」が出会い、絆を深めていきます。
この「少年」と「勇者と呼ばれるロボット」との関係は、シリーズを通してさまざまな形に変化していくものの、物語の中心に組み込まれた大切な根幹ともいえるものでした。しかし、どうして勇者シリーズでもこの要素が重要となったのでしょうか。
それは「少年」イコール「TVを見ている視聴者たる子供」だからかもしれません。つまり画面の中の少年に自分を投影することで、子供たちは勇者を身近に感じられるからでしょう。それは「勇者を手元に置きたい」イコール「オモチャを欲しくなる」ことにつながります。
かつてのロボットアニメは、主人公ロボのパイロットに自身を投影することで、そのオモチャへの購入意欲を盛り上げていきました。それが勇者シリーズでは、頼もしい仲間、強い味方といった方向になっていったと考えられます。ゆえに作品に登場する勇者の数が増えれば、それをすべてそろえたくなるという購入意欲へとつながるのでしょう。
もちろん、これはひとつの見方であり、勇者シリーズの絶対的な魅力のすべてではありません。しかし8年もの間、代替わりした子供たちを引き付けた要素のひとつではないかと考えます。
奇しくも勇者シリーズが最終作『勇者王ガオガイガー』でピリオドを打った1997年に、反対にトランスフォーマーの新シリーズである『ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー』の日本でのTV放送が始まりました。勇者シリーズに渡ったバトンは、ふたたびトランスフォーマーへと受け継がれたというわけです。
(加々美利治)