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ホアキン・フェニックスの『ジョーカー』、熱心なアメコミファンはどう受け止めた?

2020年2月、第92回アカデミー賞で史上初の「アメコミ映画による主演男優賞」が生まれました。映画『ジョーカー』主演のホアキン・フェニックスの快挙はアメコミ界だけでなく、世界を驚かせました。20キロの減量に挑み、見事に「ジョーカーという存在」を表現した彼の受賞は、アメコミファンたちからはどう見られたのでしょうか。

原作ファンの知る「設定」からかけ離れたジョーカー像

第92回アカデミー賞主演男優賞に輝いた、ホアキン・フェニックス演じる『ジョーカー』 2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C)DC Comics
第92回アカデミー賞主演男優賞に輝いた、ホアキン・フェニックス演じる『ジョーカー』 2019 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (C)DC Comics

『バットマン』の最凶ヴィランとして知られるジョーカーの誕生秘話を、原作コミックスにはないオリジナル脚本で描いた映画『ジョーカー』は、2019年10月に日本国内で公開され、興行収入50億円以上の大ヒットを記録しました。

 この作品でホアキン・フェニックスはコメディアンを夢見る心優しき青年アーサーが「ジョーカー」へと変貌していく過程を熱演しました。およそ24キロの減量で体つきを変え、堕落していく姿が披露されると、ヴェネチア国際映画祭で観客や批評家に衝撃を与え、最高賞にあたる「金獅子賞」を獲得。世界にその名前が広まり、2020年2月の第92回アカデミー賞では史上初のアメコミ映画としての主演男優賞を受賞しました。

 ホアキン・フェニックスの演技は間違いなく世間の人達の記憶に残りましたが、これは作品というよりホアキンの演技への賞賛という色合いが強い出来事でした。「ジョーカー」というキャラクターを良く知るアメコミファンは、ホアキンの演じるジョーカーをどのように受け止めたのでしょうか。

 アメコミファンの間では周知のことですが、ジョーカーの誕生秘話というのは今までハッキリしていません。いくつかのコミックでジョーカーの過去が語られたことはあったものの、それが本当かどうかわからない、不明瞭な存在がジョーカーなのです。映画『ダークナイト』ではヒース・レジャー演じるジョーカーが身の上話を語るが、毎回内容が違う……というシーンがあり、ジョーカーの本質をそこで表現していました。

 形が決まっているようで決まっていないジョーカーをあらゆる設定でいじり、コミカルなジョーカーやサイコパスなジョーカーを生み出したことで、アメコミファンのなかで理想とするジョーカー像が出来上がってきたように思えます。

 それに対し、2019年の映画では「本名があること」「知能犯っぽさがないこと」など、今までの「ジョーカー」とかけ離れていると感じさせる部分は多く、熱心アメコミファンから見ればおそらく賛否があるでしょう。

 映画の公開前に、「コミック原作を元に描かないオリジナルのジョーカー」という触れ込みは注目を集めていましたが、ふたを開けてみると過去のジョーカーを踏襲したビジュアルや場面も見られました。

 これまで、「バットマンとの関係性の中で誕生したヴィラン」という解釈がされているジョーカーを完全オリジナルの形で描くということで、ゴッサムシティやバットマンとの関係性を見せずに作られると思っていたファンもいたはずです。ジョーカーの設定付けで整合性がとれていないと感じたファンも少なからずいたことでしょう。

【画像】いま最も注目の悪役「ジョーカー」、その出自をたどるコミック(6枚)

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