丁寧に毛づくろいする愛猫 シーツやクッション、ヒトの手に侵食した結果…
漫画家の迷子さんによる描き下ろしエッセイ。迷子さんの愛猫は、全身の毛繕いがとても丁寧。見ていると心が落ち着いてきます。
丁寧に毛繕いをする愛猫

漫画家の迷子さんによる描き下ろしエッセイ。
迷子さんの愛猫は、自分の体だけでなく、シーツやクッションも丁寧に毛繕いをします。手を差し出してみると……?
* * *
うちの猫は丁寧に毛繕いをする。手、腕、顔、胸元、腹、背、脚、尻尾。上から下まで。また下から上まで。足りなかったところがあれば、そこをもう一回。着々と進むそれを眺めていると、こっちまで気分が落ち着いてくる。
世界の色々な問題ごとも、この猫の毛繕いのように隙間なく丁寧に解決されていけばいいなと思ったりする。たまに、毛繕いの真っ最中にすべての動きを停止して、脚をピンと伸ばした不安定な格好の置物と化しているのもご愛敬だ。多分デバッグ中か何かだ。
しかし、たまに自分の体以外の場所の毛繕いまで始めてしまうのはどうかと思う。猫ベッドのシーツとか、背もたれのクッションとか、寝るときに被せる毛布とかまで丁寧になめている。なんだろう。興が乗ってしまったのだろうか。
それとも、自分にはわからないだけで、あの瞬間、シーツやクッションや毛布は『猫の一部』になっているのだろうか。そうなのかもしれない。猫自身がそこを我と認識しているのならば、なぜ自分に異議が唱えられるだろう。猫が猫だと認識するのなら、そこは多分猫なのだ。
そっと手を差し出すとなめてくれた。全てが猫になる日は近い。
(迷子)