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『トイ・ストーリー2』最初は映画でなかった? ピクサー、危機的状況での制作の裏側

ピクサーのトップが下した苦渋の決断とは?

『トイ・ストーリー2』描かれるウッディ(右)とバズ(左) (C)Disney/Pixar
『トイ・ストーリー2』描かれるウッディ(右)とバズ(左) (C)Disney/Pixar

 そのため若手監督たちは途中交替させられ、『バグズ・ライフ』を完成させたジョン・ラセター監督たちが『トイ・ストーリー2』を仕上げることになったのです。ピクサーの創設者であるエド・キャットムル氏は著書『ピクサー流創造するちから』(ダイヤモンド社)で、「監督たちは衝撃を受けた様子だった。それは我々も同じだった」と苦い体験を振り返っています。

 エド氏は、この時期はピクサーのスタッフに大変なハードワークを強いることになったとも語っています。『トイ・ストーリー2』公開までの半年間、スタッフは休みなく働き、「映画が完成したときには、三分の一ものスタッフが何らかの反復性ストレス障害を発症していた」そうです。

 スタッフ一同がボロボロになりながら、『トイ・ストーリー2』は完成しました。このとき、ピクサーの会社方針も固まります。「ピクサーの作品はどれも素晴らしいと呼ばれるものにしよう」ということです。悩んだときは部署や役職に関係なく、誰にでも気軽に相談すべしという社風も定着していきます。『トイ・ストーリー2』はピクサーにとって、とても重要な作品だったことが分かるエピソードです。

ウッディに突きつけられた究極の選択

 陽気なカウガール人形のジェシーが『トイ・ストーリー2』から登場しますが、当初はジェシーが過去を回想するシーンはなかったそうです。いつも元気なジェシーですが、ジェシーをかわいがっていた持ち主の少女が大きくなり、棄てられてしまったという哀しい記憶を持っています。おもちゃにとって、一緒に遊ぶ子供が大人になり、自分たちの存在を忘れてしまうということは最大の恐怖だったのです。

 ジェシーの過去を知ったウッディは、究極の選択を迫られます。日本にあるおもちゃ博物館へ行き、ケースのなかでいつまでも綺麗なまま飾られ続けるか。それとも、やがては飽きられることを承知の上で、遊び盛りのアンディとの限られた時間を過ごすか。人間に置き換えれば、死ぬまでずっと続く安定した生活か、それとも生きていることを実感できる愛する人との暮らしに身を投じるか。そんな難しい選択に、おもちゃのウッディは、悩みに悩むことになります。

 第1作でウッディに助けられたスペース・レンジャーのバズ・ライトイヤーは、おもちゃマニアに連れ出されたウッディの救出に向かいます。おもちゃたちの間に生まれる熱い友情も、『トイ・ストーリー2』の大きな見どころです。

 アンディ少年を喜ばせるために全力を尽くすウッディやバズ・ライトイヤーたちは、子供たちのために面白いものを作ろうと尽力するピクサーのスタッフたちそのものなのかもしれません。『トイ・ストーリー2』が成功したことで、ピクサーは子供たちの信頼を勝ち得たのです。

(長野辰次)

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