アニメ『虚構推理』 目的は「真実」を暴くことではなく、納得できる「嘘」
2020年1月11日より放送が開始されたアニメ『虚構推理』が佳境を迎えています。妖怪や亡霊が当たり前のように登場し、「真実」を明らかにすることだけを是としないミステリー作品で、主人公たちがあらゆる怪奇現象の謎と対峙していきます。
怪異の姫・琴子と不死身の青年・九郎が繰り広げる「推理」

2020年1月11日より放送が開始されたアニメ『虚構推理』。原作は、城平京氏の同名の小説で2012年「第12回本格ミステリ大賞」小説部門受賞作品です。シリーズ第一作『虚構推理 鋼人七瀬』を漫画家・片瀬茶芝氏がコミカライズした作品がアニメ版の原作といえます。
物語の舞台は現代日本ですが、妖怪や亡霊など「怪異」が普通に存在する世界。幼い頃、「怪異」たちの「知恵の神」となった岩永琴子(CV:鬼頭明里)と、不死身の肉体を持った青年、桜川九郎(CV:宮野真守)のコンビがさまざまな怪奇現象や事件を解決してきます。その手法は、従来の推理ものとは一線を画し、「真実」を暴くことだけでなく、「人々を納得させる嘘」を見出すことに重きを置きます。
物語は琴子と九郎が出会うところから始まります。このふたりは、それぞれかなりの曲者。琴子は名家である岩永家の令嬢ですが、「知恵の神」になることと引き換えに片目と片足を失い、今は義眼と義足を使っています。そして、九郎は幼少時、人魚と妖怪・件(くだん)の肉を食べさせられ、不死身の治癒力と、「一度死ぬことで未来を自分の望むものに決定できる能力」を有しています。九郎は従姉の桜川六花(CV:佐古真弓)の見舞いに病院を訪れた際、琴子と出会います。
アニメ1、2話では主人公たちの生い立ち、関係性、世界観などが描かれています。キャラクターたちの会話は軽妙でユーモラス。出てくる「怪異」なものたちも、その多くはかわいらしく描かれています。その一方で、殺人事件や九郎の過去など、残酷でエグい表現や、複雑な心理描写などもきちんと描かれている点が非常に見応えのあるポイントです。
「鋼人七瀬」との戦いの結末は?物語はクライマックスへ

アニメ3話目から時が流れ、アイドルの亡霊と噂される「鋼人七瀬」事件を追うこととなります。人気アイドル・七瀬かりん(CV:上坂すみれ)死の謎解きを進めていくうちに、琴子は、「鋼人七瀬」がただの怪異や亡霊ではなく、その裏にいる黒幕の存在に気付きます。
これまで、九郎の能力と、琴子の「知恵の神」たる知性によって、チート級のコンビだったふたりは危なげなく事件を解決してきましたが、「鋼人七瀬」が相手となると簡単にはいきません。「鋼人七瀬」は凶暴化していき、九郎のかつての恋人で警官の弓原紗季(CV:福圓美里)の同僚が殺害されてしまいます。
妖怪や幽霊が当たり前に登場する世界において、推理で真実を明らかにすることより、説明のつく「嘘」で人々を納得させる方法を模索する本作品。いい意味で、見ている側の予想を裏切ってきます。物語は、琴子・九郎・紗季が共闘し「鋼人七瀬」に挑むクライマックスへ。視聴者をも納得させる「嘘」に期待が高まります。また、3人の「三角関係」も気になるポイントです。
(二木知宏)