素晴らしき「違法脱法ガンダム」の世界 「条約なぞクソ喰らえ!」で作られたチート機
「ガンダム」シリーズの世界でも現実世界と同様に、戦争にはルールが設けられています。しかし「ルールは破られるために存在する」と誰かがのたまったように、チートそのものなガンダムが作られてきました。
ガンダム試作2号機は史上初の条約違反ガンダム?

突然ですが「ガンダム」世界にも、違法脱法兵器は存在します。「宇宙世紀」など様々な世界観があるものの、それら全てには法律や条約、レギュレーションは取り決められており、「違法」「条約違反」という概念もあるからです。
なぜ、ルールがあるのでしょうか。その理由は「破壊力が大きすぎて人道に外れる」「パイロットを廃人にする」など色々ですが、裏返せば「ルールを破った方が強い」ことが一般的です。バレなきゃいい、勝てば儲けモンの「違法脱法ガンダム」はロマンにして、「大人って汚い!」という象徴でもあるのです。
ガンダム世界で初の「条約違反」をやらかしたのは、ジオン軍の「マ・クベ」大佐でしょう。オデッサの基地を任されながら防衛線を突破され、苦し紛れに水爆ミサイルを発射しています。
これが、地球連邦とジオン公国が結んだ「南極条約」にモロに違反していました。おそらく『機動戦士ガンダム』は、ロボットアニメでオリジナルの条約を設定し、それが破られるまでを描いた記念すべき初めての作品でしょう。
さらに、史上初の「条約違反ガンダム」と呼ばれるのが『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』に登場したMS(モビルスーツ)「RX-78GP02A ガンダム試作2号機」、通称GP02「サイサリス」です。核攻撃を前提とした強襲型のMSであり、ジオン軍の残党「デラーズ・フリート」の一員である「アナベル・ガトー」少佐が強奪した上で、観艦式を行っていた連邦軍艦隊を「アトミック・バズーカ」により壊滅させました。
この機体がややこしいのは、デラーズたちが「核攻撃力を有するMSを連邦軍が開発していた」と非難したことです。いや、実際に核兵器を使ったのはアンタたちじゃないの?
それに南極条約は、厳密には「核の使用」を禁じているだけで、核攻撃力を備えたMSを作ることには触れていません。しかも、南極条約はあくまで戦時条約であり、一年戦争が終わった後は効力がなくなっている可能性があります。つまり「条約違反かどうかグレーな機体を、奪った勢力が核兵器を使ってから存在意義を否定する」という、二重にも三重にもねじれた面白さがあるのです。
かたや『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』の世界では、「ニュートロンジャマーキャンセラー」(以下NJC)という技術を使ったMSや兵器が「ユニウス条約」で禁止の対象となっています。
これは、「プラント」が地球のいたるところに撃ち込んだ「ニュートロンジャマー」により核分裂を使った装置が使えなくなったなか、核分裂を再び可能にして、核エンジンを使えるようにするものです。要は「限りあるバッテリーをやり繰りしているモブに対して、莫大な核分裂エネルギーで無双できる」チート技術です。
この技術を初採用したのが、前作『機動戦士ガンダムSEED』の主人公「キラ・ヤマト」が乗るMS「フリーダムガンダム」でした。が、当時は「それまで存在していなかった技術」のため、完全に合法です。その後にフリーダムの設計図がリークされ、「連合」がプラントに向け核弾頭ミサイルを発射するのに悪用されたため、連合とプラントが停戦する際に結んだユニウス条約により禁止されました。
そして条約が有効ななか、プラントは核エンジン+NJC搭載のMS「ディスティニー」とMS「レジェンド」を開発して投入しました。このふたつは完全にアウトですが、その前に地球連合がまたしても核ミサイル攻撃をしかけたことや、レジェンドは戦闘中に消滅、デスティニーは第三勢力の「ターミナル」に回収(映画『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』で明らかに)されたことで、有耶無耶になったようです。
また同じ頃、キラも再び核エンジン+NJCを積んだフリーダムや後継機「ストライクフリーダム」に乗っていましたが、「ザフト」でも連合でもないので条約は適用されません。ユニウス条約、抜け道が多すぎやしないですか?