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シャアにせよドズルにせよジオンのお偉いさんはなぜ前線に出てくるのか あと壺の人も

赤い彗星、白磁の壺を愛する策士、ジオン軍ほぼトップの中将は、なぜ前線に出ざるを得なかったのでしょうか。細かく見ていくと、それぞれに「出ざるを得なかった」理由が見えてきます。赤い人を除いて。

現代の軍隊組織では「ジャブローのもぐら」が最もマトモ

初めこそ「戦力不足のなかガンダムを追う」無茶な任務のためにやむを得ず前線に出ていたシャアも、やがて「どいてください! 邪魔です」と言われるように。「RG 1/144 MS-06S シャア専用ザク」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ
初めこそ「戦力不足のなかガンダムを追う」無茶な任務のためにやむを得ず前線に出ていたシャアも、やがて「どいてください! 邪魔です」と言われるように。「RG 1/144 MS-06S シャア専用ザク」(BANDAI SPIRITS) (C)創通・サンライズ

『機動戦士ガンダム』のジオン軍につき、いちジオン兵士の立場から首を傾げるのが、お偉いさんたちが前線に出すぎる、MS(モビルスーツ)やMA(モビルアーマー)に乗って自ら戦いたがるように見えることでしょう。

 現代の軍隊組織においては、いかに指揮系統が機能しているかは戦争の行く末を左右し、兵力の劣った側が「まず相手指揮官を狙撃する」ことはセオリーになっています。巨大な軍事組織では指揮官こそが、手足となる兵士たちに命令を伝える脳や神経でもあり、その負傷や戦死は大混乱にも繋がるものです。また育成にかかるコストも高く、最も替えの利きにくいパーツでもあります。

 なのに、「赤い彗星」は通常の3倍速く飛んでいる場合なのでしょうか? 砂漠で試作型のMAに搭乗して白い悪魔と交戦していていいのでしょうか。自ら先陣を切って暴れるのは、将校というより『キングダム』に出てくるような武将であり、ここは春秋戦国時代かな? という感もあります。指揮系統を守るという意味では、後方の基地に引きこもって「ジャブローのモグラ」呼ばわりされていたゴップ大将が真っ当な軍人にも思えてきます。

 とはいえ、ケースバイケースに見ていけば、それぞれ「私自らが出る!」事情を抱えていることが分かります。

 まず筆頭に挙げられる「シャア・アズナブル」は、そもそも緒戦の「ルウム戦役」で5隻の軍艦を沈めるなど、前線で手柄を立てて上り詰めたタイプです。部下の「ジーン」も「シャア少佐だって、戦場の戦いで勝って出世したんだ」と言っているので間違いありません。

 しかも物語序盤では、ジーンらが返り討ちにされて手勢が減ったなか、上司の「ドズル・ザビ」から「ホワイトベースとガンダムの奪取または破壊」という無茶ぶりをされた上に、ザク3機の補充を頼んだものの2機しか回してもらえませんでした。もはや自分が「ザク」に乗って頑張るしかない、ブラック企業の中間管理職的な立場です。

 もっとも地球に降下した後は、親友「ガルマ」に居候させてもらう身であり、指揮官の責任からは解放されていました。ガルマのメンツを立てるため、そして通信回路に細工するため、ガウ艦内に留まっていたその期間こそが、もっとも「MSに乗っていない」指揮官らしかった、というのが皮肉です。

 が、上司をドズルから「キシリア」に乗り換えてからのジャブロー侵攻では、自ら赤い「ズゴック」で連邦軍本部の奥深くへと侵入しています。「突撃機動軍」に編入されていたので、作戦の内容やそれ自体は妥当なものとしても、すでに大佐になっていたシャアをその切り込み隊長にするキシリアも相当にイカれています。

 その後は機動巡洋艦「ザンジバル」を預かる身となり、「ドレン」の率いる「キャメル艦隊」とも共同戦線を張ろうとするほど(実現せず)、大戦略といわずとも戦局を左右する立場となっています。それほどの立場となりながらも、ジオン軍の兵士、将校ともに数を減らしているなかで、「ゲルググ」に乗り込んでアムロを付け狙うわけですから、単に「MSに乗って暴れたい人」とか「戦略より私情を優先する男」とかいった感じになっていますね。

【ザクから壺まで】こちらがアニメ本編では描かれなかったシャアやドズルたちの専用機などです(8枚)

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