えっ、人気あったと思うけど…評価割れる『グレートマジンガー』MXで50年目の放送開始
当時のグレートマジンガーの人気度は?
本作品を評する際に、主人公「剣鉄也」をやり玉に挙げる声は、これまでもよく聞かれてきました。鉄也は身寄りがおらず、「兜剣造」によって育てられ、そしてグレートマジンガーのパイロットになるべく、厳しい訓練を日々こなしていたという設定です。
それゆえに「戦闘のプロ」ともいえる存在で、前作主人公「兜甲児」とは性格もかなり異なるタイプでした。これが影響してか、リアルタイムで甲児の活躍を見てきた子供たちには、鉄也が受け入れられなかった人も少なくなかったわけです。
もちろんすべての子供がというわけではありません。実際、筆者はどちらも同じくらい好きです。ところがファンというものは、対抗するキャラに対してはアンチになりやすく、そしてそれが作品の評価へと直結するわけです。
こうした気持ちの部分は、グレートマジンガーに対するマジンガーZでも同様でした。ダブルマジンガーのどちらが好きか、という論争は放送当時からあったものです。これも、もちろん甲乙つけがたく、「どちらも好き」という人もいました。
まったく別の作品なら論争もあまりないものですが、同じ作品世界を持っているがゆえのジレンマというところでしょうか。それでは、グレートマジンガーの人気は高くなかったのか、というと、そうではありません。当時の筆者の肌感覚でいえば前作と変わらないくらいの人気がありました。
実際、当時の筆者は、グレートマジンガーの超合金が売り切れで買えなかった思い出があります。玩具店のショーウインドーに飾られた見本品を売ってくれとせがんだことは、今でも忘れていません。
もっとも本作のセールスが好調でなかったのは確かなようです。1974年の「ポピー(現在のバンダイ)」の玩具売り上げで、『マジンガーZ』が1位だったのに対して、『グレートマジンガー』は4位だったと記録には残っていました。それに対してさまざまな考察があります。
ひとつは、マジンガーZとグレートマジンガーが似すぎているというものでした。つまり、お金を出す親から見ると「また同じものを買って」と思うから、という考察です。筆者的には納得いかない部分もありますが、確かに興味のない人から見たら同じものに見えるという点は否定できません。
むしろ筆者が支持する考察は、玩具的プレイバリューの低さです。つまり合体や変形がないことで、この点は時代背景を見ると納得できる点です。本作の半年前ほど前から放送されたアニメ『ゲッターロボ』を皮切りに、時代は合体または変形するロボが主流となりました。
実際、この翌年のロボットアニメではそれが顕著に現れています。ポピーは変形ロボとして『勇者ライディーン』、合体ロボとして『UFOロボ グレンダイザー』のオモチャを販売していました。
この『グレンダイザー』は『グレートマジンガー』の後番組です。当初はマジンガーシリーズ第3弾『ゴッド・マジンガー』の予定だったところを、オモチャの売れ行きが好調ではなかったことから、1975年夏公開の劇場映画『宇宙円盤大戦争』をベースとした作品に変更されたのでした。
そう考えると、ロボットアニメブームを作った『マジンガーZ』ではあるものの、その直系である『グレートマジンガー』では、新たな時代の波に乗れなかったということかもしれません。後の知名度や人気から考えると、複雑な思いに駆られる人も多いことでしょう。
しかし、当時の憂さを晴らすかのように、50周年の今年になって『グレートマジンガー』の新しいオモチャが次々とアナウンスされています。「超合金魂」(BANDAI SPIRITS)のラインナップで、「GX-110 暗黒大将軍」がすでに発売されており、来年2月には同じく超合金魂で「GX-114 ヤヌス侯爵 & GX-12R ビューナスA」が発売予定です。共に超合金としては初の立体化となりました。
放送当時、オモチャの売れ行きが今ひとつといわれた『グレートマジンガー』ですが、半世紀ほど経った現在で初の商品化が連発するというのも、時代の皮肉を感じる出来事かもしれません。
(加々美利治)