『パトレイバー』はやはりTVアニメ版を観ておきたいワケ…ボリュームに気後れするな!
本来目指していたのは『ON TELEVISION』か

TVアニメ版の制作は、それまでのOVAや劇場版を担当していたスタジオディーンから、『機動戦士ガンダム』などで知られるサンライズ(※クレジットは製作協力)となり、監督は押井守さんではなく、アーリーデイズと『the Movie』の間にリリースされたOVA第7巻「特車隊、北へ!」を手掛けた吉永尚之さんが就任しました。
『ON TELEVISION』は、一話完結形式をメインにした、バラエティあふれる全47話のエピソードからなります。元々TVシリーズを想定して企画されていただけに、これがハマらないわけがありません。
旧式レイバーで奮闘する第1小隊に焦点を当てた「栄光の97式改」(第7話)、短気で粗暴な太田巡査の繊細な一面が垣間見えるお見合い回「太田惑いの午後」(第12話)、爆破テロ処理のさなか、謎の巨大怪物と遭遇する「ジオフロントの影」(第19話)など、毎回手を変え品を変え、視聴者を飽きさせないエピソードが続出しました。また「週刊少年サンデー」の連載ではなく、アニメ誌の「ニュータイプ」に掲載された読み切りコミックも「魔の山へ行けっ!」(第4話)として映像化されています。
そして何よりレイバーの活躍を存分に堪能できるのが、『ON TELEVISION』の大きな見どころのひとつです。第1話「イングラム起動」では、劇中でも初登場となるイングラムが3体のレイバーを相手に大立ち回りを繰り広げ、中でもイングラムがシールドから電磁警棒を引き抜くカットは、以降の回でもバンクとして度々使用され、イングラムのスタイリッシュなイメージを伝える象徴的なカットとなりました。
毎回登場するレイバーも作業用、試作機、軍用、コレクター仕様と実にさまざまです。なかでも「イヴの罠」&「イヴの戦慄」(第10&11話)、「黒い胎動」&「亡霊ふたたび」(第20&21話)は、レイバー戦に力が入れられた人気エピソードで、一連の4話に登場した試作型無人レイバー「ファントム」は、映像作品ではTVシリーズが唯一の登場ながらも、出渕裕さんによる傑作デザインの1体だと思います。
2クール目からは、米国に帰国した「香貫花(かぬか)・クランシー」に代わって「熊耳武緒」が登場し、マンガ版の展開がスライドします。そうして「グリフォン編」が第28、29話および第30話から第35話にて一連のエピソードとして映像化される一方、終盤は第1小隊への新型レイバー導入を伏線として散りばめつつも、あくまで「一話完結形式」にのっとり、特撮もののパロディ「CLATよ永遠に」(第44話)など、多彩なエピソードの数々で、およそ1年にわたって多くのファンを楽しませてくれました。
●押井守さんは脚本として参加
なお、それまで監督を務めていた押井守さんは、『ON TELEVISION』には脚本家として参加しており、ソ連製レイバーとテロリストの暗躍を描いた「上陸赤いレイバー」(第9話)、二課と整備班の面々の昼飯騒動を意外なオチで見せた「特車二課壊滅す!」(第29話)、地下通路で白いワニに襲われるドタバタコメディ「地下迷宮物件」(第38話)など、5本のエピソードで執筆して個性を発揮、TVシリーズならではのバラエティ感に貢献しています。
このうち、第9話(+『NEW OVA』第13話)と第38話は、それぞれ実写版『THE NEXT GENERATION』の第9話「クロコダイル・ダンジョン」、第10話「暴走! 赤いレイバー」、としてリメイクされており、観比べてみるのも面白いかもしれません(監督はいずれも田口清隆さん)。
この『ON TELEVISION』の人気を受けて、スタッフが続投する形で最終回の直接の続編となる「NEW OVA」シリーズ全16話がリリースされました。合計すると全63話にも上るエピソードが作られたこととなります。変化球のOVAに端を発して、本来目指していた『パトレイバー』の在り方にようやくたどり着いたといえるのではないでしょうか。
現在、OVAや劇場版ともども『ON TELEVISION』もまたU-NEXTなどの配信で容易に観られる環境が整っています。本数が多い分、それだけの満腹感が得られるはずです。是非この機会にその魅力をとくと味わってもらえればと思います。
■機動警察パトレイバー公式サイト
https://patlabor.tokyo/
■機動警察パトレイバー公式Xアカウント
https://twitter.com/patlabor0810
■A-on STORE(公式ショップ)「機動警察パトレイバー ON TELEVISION BD-BOX 1」
https://a-onstore.jp/item/item-1000190887/
(田中一)