『ガンダム』後の時代でもバズーカ等が使われ続けるワケ 実弾兵器の想像しがたい利点
「ガンダム」シリーズの宇宙世紀の時代には、ビーム兵器が実用化されており、時代が進むにつれMSの武装としてもありふれたものになっていきました。一方でバズーカ等実弾兵器も使われ続けました。それぞれの利点等を見ていきます。
当然メリットがあるから使われ続けるわけで…そのメリットってなに?
「ガンダム」シリーズにおいて、モビルスーツ(MS)の武装は物語の核心を成す要素のひとつです。特にビーム兵器と実弾兵器の対比と使い分けは、SF的なロマンと現実的な制約を巧みに織り交ぜ、視聴者の想像力を掻き立てます。ビーム兵器と実弾兵器にはそれぞれどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
ビーム兵器の利点は、その速度が光速に近いことです。光速は秒速約30万kmで、地球を1秒で7周半するほどの速度です。このため、ビーム兵器はたとえ光速の1%に過ぎないとしても「適切に狙えさえすれば」回避がほぼ不可能と考えられます。しかし、「適切に狙えさえすれば」という点が重要であり、「宇宙世紀」の世界観ではミノフスキー粒子の影響でレーダーが使用できず、遠距離の照準がそもそも困難であると推測されます。この照準の問題は実弾兵器にも影響を与えます。
またビーム兵器の欠点として、距離が遠いと威力が著しく減少することが挙げられます。光速だからといって、極めて遠い敵に対して有効とは限りません。
一方、実弾兵器はどうでしょうか。実弾兵器はビーム兵器とは対照的に速度が非常に遅く、秒速数km程度です。弾丸を発射するメカニズムには、火薬の燃焼ガスで弾丸を押し出す古典的な銃砲、電磁気力で弾丸を加速させるコイルガンやレールガン、弾丸自体に推進力を与えるロケット弾などがあります。
実弾兵器の利点は、特に宇宙空間では、何かに衝突するまで運動エネルギーを保持し続けることです。また、弾丸の内部に爆薬を充填した弾頭も、起爆するまでは半永久的に機能し続けます。このため、実弾兵器は宇宙空間において事実上、射程距離を無限に延ばせると考えられます。例えば、地球低軌道を周回するMSに対して地上からミサイルを発射し撃墜することは、現在の技術でも可能かもしれません。ただし、これはミノフスキー粒子の影響を考慮しない場合に限ります。
次に核兵器について考えてみましょう。宇宙世紀においても核兵器は特別な存在として扱われていますが、核融合炉やミノフスキー物理学といった要素の加わる世界ですので、我々の知るそれとは若干、異なるものかもしれないことには留意してください。
さて、我々の知る核兵器は実際のところ、宇宙空間ではそれほど効果的なものではありません。
核兵器は起爆時に大量の電磁波(主にガンマ線)を放出します。大気中では電磁波が速やかに吸収され、激しい火球を生じ、おもに熱風と爆風であらゆるものを破壊します。ところが、宇宙空間では大気が存在しないため、熱風や爆風は発生せず、電磁波がそのまま拡散する「強力な電球」に過ぎなくなります。または全方向に拡散するビーム兵器とみなすこともできるでしょう。
それでも、核兵器のエネルギーはけた違いに大きいため、爆心点から十分に近い場合は放射されるガンマ線であらゆる物体が蒸発しますが、距離が離れるほど急速に威力が減少するので、一撃で宇宙艦隊を全滅させるような使い方は難しいかもしれません。
なお宇宙空間は放射線に満ちているため、環境に対する放射能汚染の影響は考えなくてよいと推測されます。そのため我々21世紀人が「核兵器」と聞いて感じるよりも遥かに低い敷居で核兵器を使えるはずであり、例えば『逆襲のシャア』などにおいて実際そういう描写もあるようです。
いずれの場合も、宇宙空間での武器の使用は人類にとって未知の領域です。ビーム兵器のような現実には存在しないものだけでなく、既存の銃砲さえも、実際に宇宙空間で使用してみて初めて判明する問題が生じる可能性があります。結局のところ、やってみなければ分からないのが現状であるといえるでしょう。
(関賢太郎)