任天堂を「怒らせた」ゲーム訴訟事例・3選 訴えられたメーカーの「その後」は?
子供たちに夢を与えるゲーム業界も、訴訟の問題とは無縁でいられません。他社に権利を侵害されたり、不正に利用されたりする事態は、やはり見過ごせません。これまで任天堂は、どのような問題と向き合ってきたのでしょうか。
任天堂が乗り出したさまざまな「問題」
2024年9月18日、任天堂と株式会社ポケモンは、ポケットペアに対して特許権侵害訴訟を提起しました。ポケットペアが開発・販売を行っている『Palworld/パルワールド』が複数の特許権を侵害しているとして、侵害行為の差止ならびに損害賠償を求めるものです。
今回の提起について具体的な侵害要素などの詳細はまだ明かされていませんが、ゲームに関する著作権や特許権、不正競争行為などの訴訟は決して少なくありません。任天堂自身も、これまでいくつもの訴訟を起こし、公の場で自身の立場を表明してきました。
●違法プレイの温床となった「マジコン」
任天堂側が起こした訴訟はいくつもありますが、ゲーム業界全体に深刻な被害を与えたものといえば、「マジコン」に関する裁判がその筆頭に上がるでしょう。
「マジコン」とは、コピーしたゲームデータを不正に扱い、ゲーム機で遊べるようにする機器のこと。訴訟が行われた当時は、特にニンテンドーDSが多大なダメージを受けていました。
「マジコン」とゲームデータがあれば、ゲームソフトを購入することなく、そのゲームを遊ぶことができます。これが広く横行すれば、ソフトメーカーはゲームを作っても十分な売り上げが得られなくなりますし、ロイヤリティの関係で任天堂も打撃を受けます。
こうした事態を重く見た任天堂とソフトメーカー49社(カプコンやスクウェア・エニックスなど)は、2009年に差止等請求訴訟を行い、その主張が全面的に認められました。
「マジコン」の違法性や、正規ゲームソフトの販売に与えた損害に対する輸入販売業者の賠償責任が肯定される形となり、不正利用を防ぐ大きな礎となった裁判のひとつです。
●公道カートレンタルに「マリオ」のコスチューム貸与
公道でカート体験が味わえるレンタルサービスはいまもあり、海外からの観光客にも人気を博しています。安全性の面を危惧する声などが一部から上がっていますが、このサービス自体は法的に問題ありません。
しかし、カートレンタルの表示として「マリカー」を掲げる行為に対し、任天堂がその腰を上げたことがあります。当時、株式会社マリカー(現商号:株式会社MARIモビリティ開発)は、マリオやヨッシーといった任天堂キャラクターのコスチュームを貸与する公道カートのレンタルサービスを手がけていました。
ゲームファンからすれば、「マリカー」という名称は『マリオカート』を連想させます。また、「マリオ」シリーズのコスチュームを着て運転できるとなれば、任天堂が認可しているかのようなイメージを与えかねません。
そのため任天堂は、自社の知的財産を利用していると指摘し、不正競争行為に該当すると起訴。この主張が認められ、請求金額の全額にあたる5000万円の損害賠償金支払いが、被告会社に命じられました。
裁判では不正競争行為が問われましたが、マリオのコスチュームを着た人が事故の加害者や被害者になった場合、世間のネガティブな視線が任天堂にも向けられるのは間違いないでしょう。そうした事態を未然に防ぐ意味でも、意義のある裁判だったといえます。