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間違った日本の「バカゲー」 PSソフト『ライジングザン ザ・サムライガンマン』

1999年3月25日に発売された、プレイステーション用3Dアクションゲーム『ライジングザン ザ・サムライガンマン』。日本刀による優れた剣さばきと改造ハンドガンから繰り出す遠慮のない射撃。その実態はネタ要素を多分に含んだ「バカゲー」です。

『ライジングザン ザ・サムライガンマン』突き抜けた"ユーモアセンス"

『ライジングザン ザ・サムライガンマン』(ウエップシステム)
『ライジングザン ザ・サムライガンマン』(ウエップシステム)

 突然の質問となりますが、読者の皆さんは「ヒーロー」という単語にどのような人物、もしくはキャラクターを思い浮かべますか? 優しくて人に親切、強くてたくましい、普段はだらしないけどやる時はやる等々、ご覧いただいている方々がそれぞれ理想のヒーロー像を持っているのではないでしょうか。

 かくいう筆者の脳内では、スーパーセクシー……もとい、”スーパーウルトラセクシィヒーロー”こと「斬」が存在感を放ち続けています。彼が主役を務めたプレイステーション(以下PS)用ソフト『ライジングザン ザ・サムライガンマン』(以下、『サムライガンマン』)は、約20年前の1999年3月25日に産声を上げました。

突き抜けた「バカゲー」要素が魅力へとつながった

 本作を開発したのは、プレイステーション用ソフトやアミューズメント機器、PC周辺機器などを製作していた株式会社ウエップシステム(当時)。同社はスノーボードを題材に掲げたスポーツゲーム『COOL BOARDERS』シリーズをPS向けに展開していました。しかし『サムライガンマン』は、それまで同社が手掛けていたタイトル郡において異色とも言えるアクションゲームだったのです。

 まずゲームを始めたプレイヤーの目に映るのは、テンガロンハットを被りこんだ金髪の男。彼こそが主人公を務める斬こと、保安官見習いの「ジョニー」です。見た目こそ西部劇を地で行くスタイルですが、上半身は日本のお祭りを彷彿させる法被(はっぴ)、インナーに仕込んだ鎖帷子(くさりかたびら)、オマケに保安官が普段持ち歩いているとは思えない一振りの日本刀……と、見事に和のテイストが織り込まれています。というのもジョニーは単なる保安官の端くれではなく、世界征服を企む悪の組織「邪火龍」に対抗するべく日本で剣術を磨いた”サムライ”。プレイヤーは悪事をさばいて正義を執行する斬となり、強者が集うステージを攻略していきます。

 日本刀による優れた剣さばきと改造ハンドガンから繰り出す遠慮のない射撃。こう書くとさもスタイリッシュな作品のように聞こえますが、その実態はネタ要素を多分に含んだ(良い意味での)「バカゲー」です。全編に漂う”間違った日本文化”の雰囲気をはじめ、怪しげな忍者3人となぜか鐘撞き合戦を繰り広げる、招き猫ロボットと突然ホームラン対決を行う、といったツッコミどころ満載の光景は珍しくありません。

 こうした一連のQTE(クイックタイムイベント)は作中にて「漢イベント」と呼称されており、本作における一種のエンタメ要素として機能していました。必ずしも全ての要素が満足のいく傑作だったとは言えないかもしれませんが、開発陣の仕立てた”おバカテイスト”が突き抜けているおかげもあり、かえってバカゲーとしての好意的な評価につながったのだと思います。

 余談となりますが、OP映像中に流れるテーマソングの曲名は『サムライガンマン 斬 ザ・ザーン』。『ドラゴンボールZ』や『鳥人戦隊ジェットマン』など、数多くの作品で名曲を歌ってきた歌手・影山ヒロノブ氏が力強く歌い上げています。サビ終わりに流れる「サムライガンマンザンザザーン!」というフレーズは本編中のボス撃破時も響き渡るため、歌声の力強さもあいまって印象深い方が多いかもしれませんね。

 そんな本作を手掛けたスタッフの一部は、2004年に新たな開発拠点としてスタジオ斬を設立。現在は家庭用ゲームタイトルやスマートフォンアプリなど、さまざまなソフトの生産に関わっている模様です。過去IPの移植版やHDリマスター版がふとしたタイミングで発売される昨今、エンディング後の伏線が残されたまま長らく続報のない『サムライガンマン』も、近い将来に復活してくれないだろうか……と願ってやみません。

(龍田優貴)

【画像】『サムライガンマン』開発陣によるゲーム

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