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開館が待ち遠しい! 復元「トキワ荘」 マンガの聖地には青春の「光と影」があった

他にも複数あった、漫画家たちの集う「場」

辰巳ヨシヒロ氏の自伝的長編『劇画漂流』(上巻、青林工藝舎)
辰巳ヨシヒロ氏の自伝的長編『劇画漂流』(上巻、青林工藝舎)

 ドキュメンタリーアニメ『TATSUMI』(2011年)も、大変興味深い内容です。劇画の考案者である漫画家・辰巳ヨシヒロさんの生涯をアニメーション化したもので、辰巳さんの自伝的漫画『劇画漂流』をあわせて読むと、「トキワ荘」とは異なる“まんが道”があったことが分かります。大阪生まれの辰巳さんは同郷のさいとう・たかをさん、松本雅彦さんと合宿生活を体験後、東京に出て国分寺の同じアパートで暮らすことになります。

 辰巳さんが中心となり、1959年に「劇画工房」を結成。「トキワ荘」のメンバーが子どもたちをメインターゲットにしたのに対し、大人が楽しめる劇画の普及に努めました。だが、残念なことに足並みが揃わず、「劇画工房」自体は大きな実績を残せないまま解体します。

 萩尾望都さん、竹宮恵子さんといえば少女漫画界の大巨匠ですが、新人時代は東京都練馬区の貸家で共同生活を送り、「大泉サロン」と呼ばれました。山岸涼子さんら同世代の女性漫画家も集まったそうです。

 おそらく他にも、若手漫画家や漫画家志望者たちが集う拠点はいくつもあったのではないでしょうか。やがて自然淘汰され、成功者を生んだ「トキワ荘」「劇画工房」「大泉サロン」などの名前だけが残ったようです。

「トキワ荘」伝説が愛される理由

建物が復元され、開館を待つ状態の「トキワ荘マンガミュージアム」(筆者撮影)
建物が復元され、開館を待つ状態の「トキワ荘マンガミュージアム」(筆者撮影)

 最後に、大根仁監督の映画『バクマン。』(2015年)を紹介したいと思います。「週刊少年ジャンプ」で連載された人気コミックの実写化で、高校生の漫画家コンビである真城最高(佐藤健)と高木秋人(神木隆之介)が「少年ジャンプ」での連載デビューを目指す物語です。映画のクライマックス、体調を壊した真城の窮地を救うため、「少年ジャンプ」で連載枠を競った同期デビューのライバルたちが集まります。

 これは原作にはない、映画用のオリジナルストーリーです。このエピソードの元ネタとなっているのは、『あしたのジョー』などの人気漫画で有名な、ちばてつやさんの実体験です。20歳の頃のちばさんは締め切り直前に右腕を負傷してしまいます。このとき、編集者に頼まれた「トキワ荘」のメンバーは、ちばさんの画風を真似て代筆したのです。

 それまで「トキワ荘」のメンバーはちばさんとは面識がなかったのですが、「困ったときはお互いさま」と徹夜明けの体で引き受けたそうです。映画『バクマン。』は、この逸話を取り入れています。

 共同作業に慣れていたので、アシスタントの導入に抵抗がなかった。TVアニメ化の波にうまく乗った……。「トキワ荘」のメンバーが成功した要因はいろいろと考えられます。また、「トキワ荘」の伝説が愛される理由は、メンバーの朗らかな人柄も大きかったのではないでしょうか。お金はないけど、夢があった。そして、仲間たちがいた。多くの人が思い描く「青春」のイメージが、「トキワ荘」と重なり合います。

(長野辰次)

●映画『トキワ荘の青春』デジタルリマスター版
2020年5月29日(金)よりテアトル新宿、シネ・リーブル池袋ほか全国順次公開

監督/市川準 脚本/市川準、鈴木秀幸、森川幸治 出演/本木雅弘、大森嘉之、古田新太、生瀬勝久、鈴木卓爾、阿部サダヲ、さとうこうじ、翁華栄、松梨智子、北村想、土屋良太、柳ユーレイ、安部聡子、原一男、向井潤一、広岡由里子、内田春菊、きたろう、時任三郎、桃井かおり 
配給/カルチュア・パブリッシャーズ

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【画像】朝までマンガを語り合う! 映画『トキワ荘の青春』のシーン(6枚)

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