『ガンダム』のエースパイロット専用機みたいなのって現実の軍隊にもあるものなの?
ロマン砲まで装備したリアル「エース専用機」 だけど…
S12は、当時の標準的な戦闘機とは一線を画す性能を持っていました。特筆すべきが「37mmモーターカノン」を搭載していた点です。当時の戦闘機の武装において主流であった7.7mm機関銃に比べ、37mmモーターカノンは圧倒的な火力を誇りました。一発でも命中すれば敵機を粉砕する威力を持ち、まさに「ロマン砲」と呼ぶにふさわしいものでした。
S12を受け取ったギンヌメールは早速、敵機を撃墜しその高火力にベタ惚れします。これを受け量産が決定し、特別なエースたちに優先して配備されました。
しかし、S12には致命的な欠点もありました。7.7mm機関銃は前方に多数の弾丸をばらまくことができた一方、37mm砲は手動で弾丸を装填せねばならず単発ずつしか撃てないため、命中弾を与えることが困難だったのです。加えて、その重量と射撃時の反動は機体の操縦性に大きな影響を与えました。
そのためS12は特別に優れたエースパイロットにのみ配られましたが、実際の運用は困難を極め、一部の天才的パイロット、例えば後にギンヌメールを超える75機を撃墜したルネ・フォンクなどしか扱うことができませんでした。
多くの場合S12は不評であり、量産は十数機で終わったと見られます。なおS12とほぼ同型で7.7mm機関銃を搭載した「スパッドS7」と、その性能向上型「スパッドS13」は合計して1万機以上が生産されており、第一次世界大戦で最も成功を収めた戦闘機のひとつとなっています。
S12は、その強力な性能と同時に、扱いの難しさや実用性の低さという側面もあわせ持っています。これは、「ガンダム」シリーズにおける「エース専用機」の設定にも通じるものがあるのではないでしょうか。また、実戦において本当に重要であったのは、扱いやすい量産機であったという点も注目に値します。
(関賢太郎)