予想を裏切り惨敗!?『帰ってきたウルトラマン』 陰惨な描写も、子供を惹きつけた
少年時代、近所のガスタンクをじっと見ていたワケ
早朝の再放送はそれほど見ることはできませんでしたが、ほどなく他のウルトラシリーズと共に再放送が始まり、夕方に家にいれば何かしらの『ウルトラマン』を見られる時期がやってきました。
改めて1話から『帰ってきたウルトラマン』を見始めた筆者は、今まで写真でしか見たことがなかった怪獣たちが新マンと戦う姿を真剣に見つめていました。特に印象深い怪獣は、いくつかいますが、筆者にとっての筆頭はベムスターです。お腹にある五角形の口でガスタンクを食べるベムスターの姿を見てから数年間は、近所のガスタンクを食べにベムスターがこないか、じっと見ていた記憶があります。この回は新マンに新兵器「ウルトラブレスレット」を託すためにウルトラセブンが登場するという、「ウルトラ作品はつながっている」ことを示したエポックメーキング的な話でもあり、今でもたまに見返しています。
次に印象深いのはプリズ魔です。写真を見ただけではどうやって戦うのかまったく見当もつかない形をしていたのですが、予想以上に強力な怪獣で、攻撃を反転させたり逆に引き付けて焼いたりして新マンを苦しめます。最後は新マンがプリズ魔の体内に侵入し、スペシウム光線で撃破するのですが、ラストがボロボロになった郷秀樹が「ギリギリの賭けだった」と述懐して倒れこむシーンが強烈に記憶に残っています。
しかしそれら怪獣の印象をはるかに超えて鮮烈だったのが、主題歌やBGMといった音楽です。主題歌「帰ってきたウルトラマン」の作曲を担当したのはすぎやまこういち氏。郷秀樹役の団次郎さんが自ら歌いあげるメロディーは、忘れられるはずもなく魂に刻み込まれています。また、MATの出撃シーンに使用された「ワンダバ」はウルトラシリーズを代表する名曲として、後々まで強い影響を与えています。
その他にも『怪獣使いと少年』のメイツ星人の末路や坂田兄妹がナックル星人に轢き殺されるなど、陰惨な描写が多い作品ではありましたが、それだけ印象が強い作品ともなりました。
ただひとつだけ、今でも不思議に思っているのが、ツインテールがエビの味って、誰が確かめたんでしょうかね?
参考文献:『宇宙船SPECIAL‘70年代特撮ヒーロー全集』(朝日ソノラマ)
(早川清一朗)
※編集部注:「帰ってきたウルトラマン」の正式名称は「ウルトラマンジャック」ですが、本記事では執筆者の意向を尊重し、「新マン」と表記しました。