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『宇宙戦艦ヤマト』放送開始から半世紀 視聴率惨敗から未曽有のブームになったワケ

アニメファンなら誰もが名前を知っているだろう名作『宇宙戦艦ヤマト』は、結果的に一大ブームとなりましたが、そこに至るまでには痛恨の敗北からの劇的な復活劇がありました。

視聴率争いの敗北が『ヤマト』の歴史の始まりだった

4Kリマスター版『宇宙戦艦ヤマト 劇場版』より (C)東北新社/著作総監修 西崎彰司
4Kリマスター版『宇宙戦艦ヤマト 劇場版』より (C)東北新社/著作総監修 西崎彰司

 本日10月6日は、1974年にTVアニメ『宇宙戦艦ヤマト』が放映開始した日です。今年2024年で半世紀の時が経ちました。日本のアニメ文化に大きな1ページを記した、その功績を振り返ってみましょう。

『ヤマト』の物語は、アニメに興味を持つ人ならほとんどが知っていることでしょう。それほどまでの知名度があります。しかし放映当時としては斬新な設定で、視聴者はもちろん、一部のアニメ制作関係者にも驚かれました。

 なぜなら、当時の子供向け作品、いわゆる「テレビまんが」作品では、地球が舞台の作品がほとんどで、宇宙を舞台とした作品はあまりポピュラーではなかったからです。『ヤマト』以降、SFジャンルのヒット作を見ていくと、宇宙を舞台にしたものが徐々に中心となっていきました。

 そういった点から見ると『ヤマト』は、時代を先取りした作品だったというわけです。しかし、最初から成功したわけではありません。最初の難関として、TV作品として避けて通れない「視聴率争い」がありました。

『ヤマト』が放送された時間枠は日曜日の19時半です。前番組はTVアニメ『侍ジャイアンツ』でした。この時間枠には人気シリーズである「カルピスまんが劇場」の第6作『アルプスの少女ハイジ』という高視聴率番組がすでに放送されており、さらに同じ日に円谷プロ製作の特撮番組『SFドラマ 猿の軍団』がスタートしています。

 そのように視聴率激戦区だったことから、『ヤマト』は『ハイジ』のメイン視聴者だった幼児を中心とするファミリー層向けとは逆に、比較的高い年齢層をターゲットに考えました。それが結果的に『ヤマト』の魅力の一端を担うことになったのかもしれません。

 最終的には『ヤマト』は、この視聴率争いに敗れて放送を当初予定から短縮した全26話で終了します。ところが、『ヤマト』はここで終わりませんでした。『ヤマト』が再注目された原因、それは再放送により人気と知名度が上がったことにあります。

 当時は、現在と違ってまだ再放送文化というものがあり、再放送による人気再燃という現象がありました。たとえば『ルパン三世』なども再放送で人気に火が付き、第2シリーズが制作され、それをきっかけに現在のような一大コンテンツにまでなっています。余談ですが、この『ルパン三世』も本放送は『ヤマト』と同じ日曜19時半の放送枠でした。

 現在なら、ネットによって放送中から無名の作品が注目されることもあるでしょう。当時はそんなものがありませんから、情報はつねに口伝が中心でした。学校での子供たちの伝聞が、『ヤマト』の再燃を助けたと考えられます。当時の子供だった筆者の体感もそうでした。

 それに当時の男の子的には、ファミリー向けだった「カルピスまんが劇場」よりも『侍ジャイアンツ』の放送枠を注視していました。それゆえに『ハイジ』よりも、『猿の軍団』と『ヤマト』の二択の方が多かったかもしれません。もっとも筆者は映画『猿の惑星』にトラウマを抱いていたので、最初から『ヤマト』派でした。

 こうして『ヤマト』は、再放送と子供たちの口コミネットワークにより、徐々に視聴者を増やし人気を博していきましたが、もちろんそれだけではない人気要因もいくつかあったのです。

【画像】こちらが親と一緒だと出てくるたびにちょっと気まずかった『さらば』の「テレサ」です

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