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『ガンダム』人類史上最大の虐殺を行ったのに…一年戦争時に「ジオン弾圧」がされなかった理由とは

『機動戦士ガンダム』で、ジオン軍は一年戦争開戦時に、7つあるスペースコロニーの集団「サイド」の5つに無差別攻撃を行って住民を抹殺。そのコロニーを地球に落としたことで「総人口の半数」が死に至らしめられたとされています。ここまでして、なぜジオン弾圧の世論が広がらなかったのでしょうか?

ヒットラーの尻尾どころではない…ジオン軍が出した多大な犠牲

一年戦争開戦前が描かれた『機動戦士ガンダム THE ORIGIN I 青い瞳のキャスバル』 (C)創通・サンライズ
一年戦争開戦前が描かれた『機動戦士ガンダム THE ORIGIN I 青い瞳のキャスバル』 (C)創通・サンライズ

『機動戦士ガンダム』で、「ジオン公国」は主人公陣営の敵対国家として描かれます。ジオン軍は一年戦争開戦時に、7つあるスペースコロニーの集団「サイド」の5つに無差別攻撃を行って住民を抹殺。そのコロニーを地球に落としたことで「総人口の半数」が死に至らしめられたとされています。

 一年戦争開戦の29年前である、宇宙世紀0050年の時点で総人口は110億とされており、人口に大差がないのであれば、ジオン軍は55億人を殺害したことになります。

 劇中でジオン公国の「デギン」公王は、この戦争を指導した「ギレン」総帥を「ヒットラーの尻尾」と揶揄(やゆ)します。「尻尾」と言われていますが、人類史上最大の犠牲者を出した、第二次世界大戦の犠牲者数が5500万人であり、第二次世界大戦全体の100倍の犠牲者が、わずか一週間で発生したことになりますので、尻尾どころではないと筆者は感じますが。ちなみに第二次世界大戦から79年経ちますが、現代のドイツは「ナチス的なもの」は禁忌とされており、政治家などが失言すると社会的に抹殺されるような状況です。

 これに対し『ガンダム』では、一年戦争終結から3年を経た宇宙世紀0083年を描いた『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』の時点でも、ジオン軍残党であるアクシズ艦隊と政治的取引が行われ「中立」を認めています。劇中ではジオン公国を戦争に走らせたザビ家主義を掲げた「デラーズフリート」が「星の屑作戦」を成功させ、コロニー落としを成立させていますので、そこでもさらなる犠牲者が出たと思われます。

 そこまでされて、ようやく地球連邦政府は「ティターンズ」を立ち上げ、ジオン残党狩りに乗り出しますが、スペースノイドはそのティターンズに反発し、地球連邦軍のなかからも反ティターンズを掲げて武力闘争を行う「エゥーゴ」が出現します。

 そして地球圏に帰還した「アクシズ」もザビ家の「ミネバ・ザビ」を指導者としていましたが、ティターンズでさえ対決姿勢というよりは「エゥーゴ打倒のために、アクシズを利用できないか」という姿勢を取るわけです。

「ニューディサイズ」など、例外はあるにせよ、ティターンズ自体がスペースノイド側に立つ「シロッコ」に牛耳られてしまう辺り、ジオン的価値観や、スペースノイドへの肩入れがそこまで禁忌とされていない印象を受けます。実際、アクシズが「ネオジオン」を名乗り、さらなるコロニー落としを成功させ、その後敗北に追い込まれて弱体化してすら、ジオン弾圧という世論は成立していません。

 宇宙世紀0091年の『機動戦士ムーンガンダム』で、地球連邦はミネバと思われる人物を拘束します。地球連邦からすればテロリストの親玉であるはずですが、拘束を即座に発表し、大軍事力を向かわせて保護するなど、存在を政治的に利用しようという動きは少ないのです(この時のミネバが影武者だとしても、偽物だとネオジオン側が証明できるとは限らず、プロパガンダには使えるでしょう)。

 これは宇宙世紀0093年の『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』でも、ジオニズムを思想的に支える「ジオン・ズム・ダイクン」の息子で、エゥーゴから反地球連邦の軍事行動をとり続けているシャア相手に、連邦政府が妥協しようという動きでも裏付けられています。要するに「ジオンの徹底弾圧は、地球連邦の世論ではない」ということになるのでしょう。なぜこうなるのでしょうか。

【画像】え…けっこうカラフル! コチラがみんな大好き「ザク」の系譜のMSです(5枚)

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